2023年

2023年

12月

20日

80年代のクリスマス・イブ

 壁の飾りをかえました。山下達郎「クリスマス・イブ」昭和58年(1983)

 早いもので今年もあとわずかになりました。ふり返りますと今年は7月からずっと80年代音楽の話を続けておりましたので、80年代を代表するクリスマス・ソングで本年のブログをしめたいと思います。

 もう誰もが知る名曲です。初めてリリースされたのは1983年9月アルバムの1曲でした、83年12月にシングルカット、86年に再度シングルカット(この写真の盤です)。88年にJR東海のCM「クリスマス・エキスプレス」(1)に採用され爆発的に有名になりました。80年代後半の空気がよく伝わってくるCMでした。

 さてこの名曲には「カノン進行」というコード進行が使われていて、ベース音が順番にドシラソファミレと下がっていくのです。これが、スムーズな流れと優雅な響きををもたらすのです(2)。間奏にはパッフェルベルの「カノン」そのものが使われていて、山下さんによる多重録音アカペラつきです。曲全体が荘厳な雰囲気で本当にクリスマスにピッタリですね。

 そして歌詞世界も文学的です。「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」なんて奥行きのある世界。さらにすごいなあと思うのが韻を踏まえた言葉選び、「きっと君は来ないひとりきりのクリスマス」→キ→キ→コ→キ→ク、「叶えられそうもない/必ず今夜なら」カナ→カナ、リズムとつながりを感じます。

 曲も詞も山下達郎さんの才気が隅々まで詰め込まれた作品です。

 2023年もブログにおつきあいくださりありがとうございました。皆様よいクリスマスをお過ごしください、そして幸せな新年をお迎えください。2023/12/20(院長)

 

(1)88年  深津絵里(この年だけホームタウン・エクスプレスX'mas編という名称)、89年  牧瀬里穂、90年  高橋理奈、91年  溝渕美保、92年  吉本多香美

(2)この曲はキーAで、A →E/G#→F#m7→E6→DM7→C#m7→Bm7→E 、度数で言うとI→V/VII→VIm7→V6→IVM7→IIIm7→IIm7 →Vで、このI(ド)→VII(シ)→VI(ラ)→V(ソ)→IV(ファ)→III(ミ)→II(レ)という風に順番に下がるので順次進行とも言います。2番目のV/VIIって何?と思うかもしれません、Iの次にVを置くのはトニック→ドミナントの定番進行なのですが、これだとベース音が「ソ」になります、ここでVの転回和音を持ってくる工夫をするとベース音が「ド」から1個下の「シ」VIIにできるのです。

転回和音とは、例えばIをドミソとするとVはソシレですが→下のソを1オクターブ上げてシレソにして鳴らすのが第1転回形と言います。そしてこの和音の最も低音が「シ」つまりVIIになるのです。

同様にして他の和音も転回形を利用してベース音が1個ずつ下がるように作られた進行なのです。

 カノン進行はアレンジを加えながら多くの曲に使われています。

 

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2023年

12月

06日

雪組「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAY」

壁の飾りをかえました

宝塚雪組「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAY」

 遅れに遅れての開幕でした。様々な葛藤がある中で、雪組の皆さん本当に頑張っておられました。

 芝居「ボイルド・ドイル」はコミカルで笑いの場面が多数。大きな本のセットが素敵でした。ショーの要素が多く、ミュージカル仕立てです。

咲ちゃん(彩風咲奈)とアーサ(朝美 絢)の掛け合い、咲ちゃんと和希そらの掛け合いも、芝居の流れがとても良かったです。

 咲ちゃんは、志と現実と運命にはさまれ苦悩する役が多くて、そこの芝居に私院長はいつも心打たれます。そして妻エリーザを演じる夢白あやちゃんがかわいい、優しくて健気でアーサー・コナン・ドイルを支えるのですよ。

 今回で退団の和希さん、この人は渋い声、カッコよくてユーモアもあるイケメンオヤジ、引き込まれます。男役のひとつの完成形ですね、やめるのが本当に惜しい。そういえば「会社を退職させてもらいます!」というセリフがあって、周りが全力で止める場面があります。みんな和希さんにやめてほしくない気持ちが伝わってきます。

縣千のメイヤー伯爵はニセ降霊術や催眠術をつかう、胡散臭さ満載、笑いのポイントでした。

 ショーは「FROZEN HOLIDAY」クリスマスとお正月気分が満載、とにかくメリクリあけおめがずっと続く。演出の野口先生は往年のMGMミュージカル的豪華なショーが得意。今回も大人数使いのシーンが多数あり、本当に華やかです。目が迷子になりそうです。手足が長くてダンス上手の咲ちゃんが映えます。そして退団する和希そらさんの場面がすばらしい!説得力ある深い歌唱、そしてダンスは白い蝶が舞っているかと思った。咲ちゃんとのデュエットダンスあり。ファンは泣いて笑って忙しいでしょう。他にも朝美絢のサンタクロース、縣千のラッパーなどユニークな場面あり。

 見どころたくさん、明るく楽しいハッピーなショーです。皆様機会がございましたら、ぜひ素晴らしい雪組の舞台をご覧ください。 (2023.12.6院長)

 

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2023年

11月

08日

テクノサウンドの普遍化「Romanticが止まらない」

壁の飾りをかえました。

C-C-B「Romanticが止まらない」昭和60(1985)年

 この曲、作った人たちが豪華!作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:船山基紀、プロデューサーは筒美先生の実弟の渡辺忠孝さんです。

 何といっても笠浩二さんがシンセドラムを叩きながら歌うスタイルが強烈なインパクトでした。彼らのファッション、髪型、メガネも印象的でしたね。笠さんの透明な高音も魅力でした(1)。

 イントロのシンセサイザー・サウンドから心を鷲掴みです。歌謡曲的なキャッチーなメロディ、テクノを導入し、ファンクの要素もある。当時の洋楽で言うと英国のニューウェイヴのような構成なんです。筒美メロディーは先端のものを取りこんで歌謡曲、アイドル、何でも創作されていましたからスゴイです。

 テクノ音楽の黎明は78年結成のYMOが実験的音楽にはじまりました(4)。3年後の81年にはすでにテクノは世の中に受け入れられていたわけです。このあとデジタル音楽技術は幅広くポピュラー音楽に浸透し大衆社会に消費されてゆきます。

 前回記事でお話したようにテクノサウンドは78年頃から始まり81年にはすでに世の中に受け入れられてきました。85年になると本曲のように歌謡曲にも組み込まれるようにもなったわけです。このあたりテクノサウンドが普遍性を持つようになってきた過程を見ることができます。このあと、CDの実用化、カラオケの普及、バンドブーム、J-POPなどにより日本の音楽は変化してゆきます。

 皆様機会がありましたら、C-C-Bの名作「Romanticが止まらない」もう一度お聴きください。(2023.11.8 院長)

 

(1)当初、笠さんはリードボーカルの予定でなかったそうです。レコードジャケット写真で笠さんが端っこなのがそれを物語っています。筒美京平さんが「この子の声で行く」と決めたそうです。

 

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2023年

10月

25日

80年代テクノ「ハイスクールララバイ」

 壁の飾りをかえました。前回の一風堂に続いて80年代電子音楽です。

イモ欽トリオ「ハイスクールララバイ」昭和56年(1981)作詞:松本隆、作曲:細野晴臣

 TVバラエティ「欽ドン!良い子悪い子普通の子」のメンバー、山口良一(ヨシオ)、長江健次(フツオ)、西山浩司(ワルオ)のシングル曲です。オリコン7週連続1位獲得、累計160万枚を売り上げる超大ヒットだったのです。こんなに売れていたとは知らなかった!(1)。

 YMO細野さんのメロディーがキャッチーであったこと、山口(ヨシオ)と西山(ワルオ)の掛け合いパフォーマンス(2)が大人気の理由だったと覚えています。

 曲は典型的初期YMOテクノサウンドです。「ライディーン」風のイントロから入ります、ハイハットのリズムが気分揚がりますね!シンセサイザー音がこの時代的です。山口さん(ヨシオ)はシンセ演奏の物まね担当。当時まだアナログシンセが主流、大きなコントロールパネルがついていて、YMO坂本教授はキーボード演奏しながら頻繁にダイアルやスイッチを触っていた、これをよく真似ています。時代を反映していますね。このあと83年頃からデジタルシンセが普及し(3)音色変換が簡略化され手元だけで済むようになりました。

 テクノ音楽の黎明は78年結成のYMOが実験的音楽にはじまりました(4)。3年後の81年にはすでにテクノは世の中に受け入れられていたわけです。このあとデジタル音楽技術は幅広くポピュラー音楽に浸透し大衆社会に消費されてゆきます。数年後にはユーロビート流行、簡易な音楽作成手段としてのカラオケ伴奏やスーパーマーケットのBGMにまで広まるといった具合です。

 80年代は様々なサウンドが発展した時代です。デジタルサウンドが広まり始めたきっかけである「ハイスクールララバイ」、機会がありましたらぜひお聴きになってください。(2023.10.25 院長)

 

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(1)デイリー新潮2023.9.30 「西山浩司が語る「イモ欽トリオ」秘話 ハイスクールララバイは160万枚売れたのに音楽賞はゼロ、紅白にも出なかった理由」

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/09301106/

(2)長江のレコーディング中、暇だった山口と西山が、ふざけてスタジオでYMOの演奏真似をして遊んでいたものが採用された(Wikipediaより)

(3)83年にYMAHAがデジタルシンセDX-7を開発し一気にデジタル化が進みました。当ブログ「桑田佳祐さんがGSに捧げるオマージュ」

(4)当ブログ「YMOの功績 ライディーン」

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2023年

9月

20日

80年代の熱気「すみれ September Love」

9月も下旬というのに暑いですね。

一風堂「すみれ September Love」昭和57年(1982)作詞:竜真知子、作曲:土屋昌巳

 前回のNENA(ネーナ)大ヒットは1984年の話でしたが、その少し前、日本ではこんなことが起こっていました。小林克也ベストヒットUSA(1981年10月~)やSony Music TV(1983年12月~)で洋楽が身近に広まり、邦楽においては1980年にニューミュージックが衰退傾向、アイドル全盛時代に入れ替わりました。他方1978年からのYMOをはじめとするテクノ・ミュージック、そしてその流れをくむニューウェイヴ(new wave)・サウンドが80年代初めから台頭しました。

 一風堂はこのニュー・ウェイヴの嚆矢ともいえるロックグループです。まずビジュアルからして奇抜かつオシャレ。髪型、お化粧、衣装とも当時の最先端でした。近寄りがたいアーティスティックなオーラを感じました。もちろん音楽も、歌謡曲やアイドルはもとより商業系洋楽ロックとも違って芸術性高い感じでした。まあニューウェイヴというのはマイナーでちょっとわかりにくいって所に値打ちがあるというように認識されていた気がします。

 この作品は企画段階からカネボウのCMタイアップ曲(2)と決まっていてレコード会社と事務所による全く商業主義だったわけです。CMの効果もあり大ヒットしました(オリコン最高2位、年間売上21位)。芸術家肌の土屋昌巳さんがよくOKしたなあと思います。楽曲はファンク・リズムに軽快なサウンド、メロディーがキャッチーですからそこが大ヒットにつながったのでしょう。ここに土屋さんギターの技巧が光ります。そして当時最新のデジタル・テクノロジーをふんだんに使い、最新鋭サウンドを作っていたわけです(3)。ちょうどこの82年頃から急速にデジタル化が進み、様々な実験的なサウンド作りが広がり、その後の80年代音楽シーン全盛へ向かったように思います。

 ともあれ今2023年に改めて聴いても古さを感じさせない、不思議な魅力を持った曲です(4)。皆様、ぜひ一風堂(5)の「すみれ September Love」をお聴きください、そして80年代音楽シーンの熱気を感じてください。 (2023.9.20 院長)

 

(1)ニューウェイヴはメジャーレコード会社ではなくインディーズ(独立系小規模会社やレーベルのこと)での活動が多かったように思います。

(2)カネボウ化粧品「レディ80・パウダーアイシャドウ」のコマーシャル、ブルック・シールズが出演。この時代の日本は本当にお金があったのですね。

(3)ドラムパートは土屋さんがPCM音源を用いたサンプラーで打ち込んだとされています。

(4)土屋さんはこのあと商業的作品制作から離れ、自らのスタイルで創作活動を続けておられます。多方面にわたる才能を持った天才だなあと思います。

(5)なお余談ですが、ラーメンの「博多一風堂」は 当バンド名が店名の由来となっていることが本人たちの対談で明らかにされています。

 

関連年表

81年10月ベストヒットUSA放送開始

82年10月CD(コンパクト・ディスク)発売開始

82年10月 MIDI 1.0 規格(電子楽器の演奏データを機器間で転送・共有するための共通規格)

83年5月デジタルシンセサイザー ヤマハDX-7発売

83年7月任天堂ファミリーコンピューター発売

 

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2023年

9月

06日

東西対立と80年代洋楽サウンド ネーナNENA

壁の飾りをかえました。

ネーナ「ロックバルーンは99」原題"99 Luftballons"(1) 1983年

演奏NENA、作詞カーゲスCarlo Karges、作曲ファーレンクロッグ=ペーターソンJoern-Uwe Fahrenkrog-Peterson作曲。

前回ブログ宝塚月組「フリューゲル」は1980年代東西ドイツ対立がテーマでした。思い出すのは、80年代ってまだ東西冷戦が常に身近にあったなあということです。1970年生まれ以上くらいの世代の人は皆この感覚を共有しているんじゃないかと思います。

そんな社会背景での1984年大ヒットです。西ドイツのロックバンド、NENAネーナの本作はまず西ドイツ国内で1位の大ヒット、そして偶然米国カリフォルニア州のラジオDJの耳に留まり放送したところ全米に拡散しビルボード2位まで上昇、さらに世界中でヒットします。日本でもSony Music TVや小林克也ベストヒットUSAでのミュージック・ビデオ流行に乗ってバカ売れしました。懐かしい。

わかりやすい明るいメロディー(2)のポップです、シンセサイザーがとても80年代的、チョッパーベースもゲート・リヴァーブを利かせたスネアドラムも80年代サウンド、懐かしい。歌手のネーナ(本名Gabriele Susanne Kerner)はアイドルのルックス、かわいかった!ドイツ語の響きが新鮮でした。英語以外の曲がTop10入りすることは極めて稀なのだそうです。

きわめて明るい楽曲に対して、歌詞は東西対立を風刺し反戦を訴えているのです(3)。80年代当時ってことあるごとに東西が対立し不安定でした。改めて聴くとあの頃の複雑な空気を思い出します。

皆様ぜひこのNENAをお聴きになって80年代のサウンドと空気を感じてみてください。(2023.9.6 院長)

 

(1)原題は「99個の風船」というシンプルな意味。邦題のつけ方はちょっと赤面するダサさですね。

(2)よく聴くとこの曲、メロディーは2つしかなく、大半がAメロの繰り返しなんですよ。これですべて押し切るとは力技です。同時期日本のシティポップの技巧的なサウンドとは対象的です。まあメロディーの力と時代の空気が後押ししたのですね。

(3)歌詞和訳サイトなども御参照ください

 

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2023年

8月

23日

宝塚月組 フリューゲル/万華鏡百景色

壁の飾りをかえました。

月組「フリューゲル/万華鏡百景色」8/18〜9/24 宝塚大劇場

 ミュージカル「フリューゲル」は齋藤吉正先生の作、ベルリンの壁崩壊1年前の話です。ベルリンの壁崩壊と民主化へ向かう東ドイツが舞台。東独軍人ヨナス大尉を月城さん、西ドイツのポップスター(1)、ナディアを海乃さんが演じます。ヨナスがはじめはもう堅物でマジメすぎなのが、ナディアと打ち解ける過程で変わってゆきます。このあたり月城さんの芝居が上手いです。ナディアは西独のアイドル、ワガママでオテンバで、ヨナスが何かと振り回されるのもコミカルで楽しい。

鳳月杏さんは国家保安省のヘルムート役、東ドイツの社会主義を守ろうとする狂気の演技が巧い。対して西側芸能マネージャーのルイスを風間さんが演じる、これがはじめチャラいキャラで笑いを誘うのですが、芝居が進むにつれ変わっていくんですよ、これも風間さんの演技の味わいです。ヨナスの母エミリアも鬼気迫る演技。

さすが「芝居の月組」で、幼少時代(2)や、市民や学生たち、警官、軍人も各所で細かい芝居をしていて目が離せないです。

 ショー万華鏡百景色は栗田優香先生の大劇場デビュー作。江戸からはじまり現代までの東京を舞台にしたショーです。芝居仕立てになっていて各時代のストーリーがつながっていくという構成です、これも面白い。ピンクの衣装の中詰め場面は1970-80年代日本のシティポップがテーマです。一定以上世代の日本人なら誰もが知っている、EPOさんの”Down Town”(3)で始まります。なつかしいわあ。

このほかにもみどころたくさんです。

皆様機会がありましたらぜひ月組の舞台をご覧ください。

(2023.8.23 院長)

 

(1)実際にこの当時西側アーチストの招聘公演がありました。

1988年7月、ブルース・スプリングスティーンが東ベルリンで上演、これはブルースが労働者階級の代表として招聘されたのです。本公演の女性ポップスターは誰がモデルなんでしょうか?NENA(ネーナ)?ニナ・ハーゲン?

(2)冒頭ヨナスの少年期を演じた朝香ゆららちゃん、とてもよかった!

(3)フジTV「俺たちひょうきん族」のテーマ曲です

 

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2023年

8月

02日

コード進行が同じ「ビーチタイム」

毎日暑いですね。壁の飾りをかえました。

TUBE「Beach Time(ビーチ・タイム)」昭和63年(1988)4月

作詞:亜蘭知子、作曲・編曲:織田哲郎

夏が来るとTUBEを聴きたくなりますね。

さてこの「Beach Time」は松田聖子「青い珊瑚礁」のカラオケで歌えることをご存知でしょうか。それはコード進行が全く同じだからなのです。この2曲が似ていることは昔から言われていて、いわばカラオケでのお遊び用ネタくらいに考えられていました。街の噂、つまり音楽好きアマチュアの間では「これはわざとやってるだろ」「いや偶然にちがいない」など色んな意見がありました。

実は当時のプロデューサー長戸大幸氏は意図的に完全にパクっていたと語っておられます。2021年エフエム滋賀のラジオ番組で長戸氏本人が、「TUBEのシングル曲「Beach Time」(1988)を、松田聖子の大ヒット曲「青い珊瑚礁」(1980)を模倣して制作したことを、明かした」のです(1)。長戸氏は「青い珊瑚礁」の元は有名な映画曲「慕情(Love Is A Many-Splendored Thing)」であり、さらにその源流はプッチーニ「蝶々夫人」であることを分析されています。それならば「青い珊瑚礁」に徹底的に似せて作ってみようとしてできたのがTUBE「Beach Time」というわけなのです。

聴いていただければわかると思いますが、アイドル曲をコード進行だけ流用したとはいえ、完全にTUBE独自のサウンドを作りだしています。そこには単なる借用というよりも、8年前のアイドル音楽は既に古いものとしてこれを完全に咀嚼し、一段高い視点から俯瞰して自由に使えているということです。これは相当な音楽的素養がないとできない技であります。すなわち日本のポップスがかなりの進化を遂げたことを表しているのだと思うのです。

実際、1980年からのアイドル黄金時代が終わり、1985年頃からバンドブームを経て日本の音楽は新世代になってゆき、80年代後半にはJ-POPという概念が確立しました。この時期から洋楽をあまり意識せずとも独自のポップスを作れるミュージシャンが激増しました。例えば長戸氏の音楽事務所ビーイング(2)の作りだした一連のアーティスト・作品がそうです。明治時代から始まった日本ポップスは長い間西洋音楽を自分のものにしようと努力を続けてきました(3)、昭和の終わりになってついに自国オリジナルの音楽を作り出せたように思います。

2023年の猛暑、日本ポップスの歴史に思いを馳せながら「青い珊瑚礁」と「Beach Time」の聴き比べして涼んでくださいませ。

まきの内科クリニックは8月11-16日まで夏休みをいただきます。

よろしくお願い申し上げます。 (院長 2023.8.2)

 

(1)https://being-music.net/2227/

TUBE「Beach Time」は松田聖子「青い珊瑚礁」を完全にパクった曲だった 長戸氏語る

(2)BEing 音楽事務所、85年TUBE、88年B'z、91年Mi-Ke、ZARD、川島だりあ、T-BOLAN、WANDS、92年大黒摩季 など

(3)「大瀧詠一のニッポンポップス伝」に詳しく歴史が語られています

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2023年

7月

19日

花組「鴛鴦歌合戦/Grand Mirage!」

壁の飾りをかえました。

花組「鴛鴦歌合戦/Grand Mirage!」 2023/7/7~8/13 宝塚大劇場

 原作は昭和14年(1939)マキノ正博監督の日活映画です。映画は69分と短いので、宝塚向けに少し話をかえ、さらに総踊りもあってにぎやかです。

 オペレッタと言うだけあって歌で話を進めてゆきます。とりとめのない喜劇なのですが底抜けに明るい幸せな話で、難しいことを考えずに楽しめます。芝居中あちこちで笑いが起こりました。

 トップ柚香光さんは主役浅井礼三郎をが演じます、浪人、着流し、下駄でカッコイイ、原作の片岡千恵蔵さんばりに落ち着いた芝居です。娘主役の星風まどかさん、ヒロインお春を演じます、これが本当にかわいい。礼三郎のことが好きなのになかなか言い出せない。何かというとライバルの娘たちの邪魔が入ってはスネてしまう。「ちぇっ」のセリフが可愛いです。

 この芝居、面白いキャラがたくさん。骨董好きの峰沢丹波守を永久輝せあさんが快演します。バカ殿ぶりの芝居が楽しいです(1)。ヒロインのお父さん志村狂斎をベテラン和海しょうさんが演じます。この役は実質的に副主役と言ってもいいでしょう。骨董狂いのダメ父親なのですが娘のお春を愛しています(2)。和海さんは本当に歌が上手で、芝居では重厚な演技、色気があって、何でもできる花男(花組らしい男役さんのこと)です。今回公演で退団されるのが大変惜しいです。原作になかった殿様の弟、秀千代(聖乃あすか)のヘナチョコ若様と小姓の空丸(美空真瑠)のかわいい演技、このコンビも見どころです。特に銀橋の下から出てくる所は一瞬なのでお見逃しなく。

 楽曲は意図的に原作の曲をそのまま使っているようです。さすがに現代のファンが受け入れにくいのではないかと心配するものもあります。原作のスイングジャズ感を強調する編曲と楽器構成にすればもっとよかったなと思います。昭和歌謡を研究する身としては「僕は若い殿様」(=青い空僕の空)、「青葉の笛を知るや君」(=或る雨の午后)、「偉いぞ偉いぞ」(=東京スウィング)いずれも戦前ジャズの帝王ディックミネさん歌唱の名曲で胸熱ですわ。

 ショー「グランミラージュ」はこれこそロマンチックレビューの本質。パステルカラー、広つば帽子、総踊り、そして優雅な時間が流れます。中詰め「シボネー」は8分間の長丁場、高揚感のある舞台。名歌手、和海しょうさんが歌いあげるところはテンション上がります。星風まどかちゃんを一之瀬航季さんが一人で肩に担いで登場する場面、これは驚きです。そして総員踊りまくりの豪華な見所です!とくにシボネー後半で上手側、侑輝大弥さんが汗だくになって暑苦しい顔でダンスを繰り広げるのは男役的色気が圧巻!ぜひ注目ください。夜の街の場面(黄色の衣装)愛乃一真さん(まのかずま)のキレキレ・ダンスにオペラグラスが釘づけになりました!ロケットダンスは黒を基調とした衣装で腰羽根なしシックで大人っぽい。後半のボレロ・ルージュも情熱的でよかったな。そして永久輝さんの歌をバックにトップコンビがデュエットダンス、本当に優雅です。

 魅力たくさんの花組公演、機会がございましたらぜひご覧ください。(2023.7.19 院長)

 

(1)原作では大歌手ディック・ミネさん(だから殿の名も峰沢です)が演じ、楽曲「青い空僕の空」「或る雨の午后」「東京スウィング」をジャジーに歌うんですよ。

(2)原作では名優 志村喬さんが演じます。役名もそのまま志村さん。

 

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2023年

7月

05日

80年代アイドル黄金期の幕開け「青い珊瑚礁」

壁の飾りをかえました。7月なので夏らしい曲を。

松田聖子「青い珊瑚礁」昭和55年(1980)作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:大村雅朗

 三浦、大村コンビは昭和53年八神純子「みずいろの雨」で注目を集めました。ちょうどニューミュージックが全盛の年です。一方アイドル勢は不発が続いていました。その後昭和55年(1980)ニューミュージックがそろそろ下火になったころ、新しいアイドル松田聖子が「裸足の季節」でデビューしました。資生堂「エクボ洗顔フォーム」CMとタイアップし人気を上げます。2枚目シングル「青い珊瑚礁」は、松田の特長である伸びる高音を冒頭におくことで、印象を決定づけています。ここから立て続けにヒットを飛ばします。松田聖子の成功をきっかけに、80年代アイドルの時代が続きました。

 80年代アイドル・サウンドはニューミュージックの洗練を取り入れた新しいサウンドと言えましょう。70年代アイドルの音とは明らかに異なります。77~79年頃のニューミュージック全盛期、即ちアイドル低迷時代のギャップを経由したことにより70年代スタイルと隔絶できたのだと思います。

 作曲の小田裕一郎さん、初ヒットはサーカスのアメリカン・フィーリング昭和54年、滑らかで音の取りやすいメロディラインを持ちながらシティポップ的なセンスも高い(1 レコードコレクターズ2014年11月)こののちも多数アイドルに楽曲を提供。

 大村さんの編曲は清潔感があって軽やかです。当時のヤマハ系、ポプコンの特徴ともいえます、しかしよく聴いてみると楽器は多く複雑な構成で、プロのサウンドという感じがします。

 作詞の三浦徳子さんも「みずいろの雨」が出世作となり、79年にはシティポップ作品松原みき「真夜中のドア」も書いています。80年松田聖子の作品に続き次々にアイドルの作詞でヒットを出します。

 当時院長は中学生、アイドルには興味がありませんでした。今もそれほど好きではありませんが、大人になって研究として聴くにつけ、アイドル・サウンドにおける作詞・作曲・編曲・演奏のプロ達の技巧の凝らし方が偉大だったのなあと感じます。

 皆様機会がありましたらぜひ80年代アイドルサウンドの契機となる「青い珊瑚礁」をお聴きになってください。 (2023.7.5 院長)

 

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2023年

6月

21日

梅雨ですね「みずいろの雨」

壁の飾りをかえました。

八神純子「みずいろの雨」昭和53年、詞:三浦徳子、曲:八神純子、編曲:大村雅朗

 梅雨なので雨の歌にしたのですが、実は9月発売なんですね。10月19日TBS「ザ・ベストテン」今週のスポットライト出演をきっかけに大ヒット。オリコン最高2位、60万枚まで売れました。

 八神さんて本当に歌上手ですよね。そして作曲・作詞の才能もあって。天才を感じます。そしてこの時代独特のサウンド。最近の言い方ですと「シティポップ」風なんでしょうか。聴くとあの頃の独特の空気があります。

 最近、もしかしたらその空気とは「ポプコン」的サウンドなのではないかと思うようになりました。「ポプコン」、今の人には聞きなれないかもしれません、「ヤマハポピュラーソングコンテスト」(1)の略称です。都会的でおしゃれでスマートで色んな分野を取り入れた感じのサウンドです。対極にあるのはロック、ロックンロール、ハードロック、リズム&ブルース、ソウル、歌謡曲、演歌です。こういうコテコテな要素ではない、きれいなサウンドがポプコン的という気がします。うまく一言で言い表せずスミマセン。

 さてこの曲のポプコン色は八神さんの経歴をみると明らかです。昭和49年(16歳)でポプコン優秀曲賞、翌年もポプコンで優秀曲賞に入賞。昭和53年1月にプロとしてレコードデビュー、デビュー当初からネム音楽院(=のちのヤマハ音楽院)出身の選抜メンバーで構成された専属バックバンドを率いていたということです。また編曲の大村雅朗さんはネム音楽院(ヤマハ音楽院)出身、ヤマハ音楽振興会に入りポプコンやコッキーポップ用の楽曲アレンジなどに携わっています。やはりポプコン色濃厚です。八神さんのヒット作(ポーラスターやパープルタウン、Mrブルーなどの)も編曲されていますね。

 ポプコンに受賞し、デビューした方々(2)をみると何となくあの頃の雰囲気が思い出されます。ポプコン・サウンドとヤマハ系列、あの時代の一大分野と言っても良い気がします。誰か音楽雑誌などで分析研究してくれんかな。

 皆様、梅雨で家にこもりがちの際は、ぜひ「みずいろの雨」ポプコン・サウンドをご鑑賞ください。(2023.6.21 院長)

 

(1)Wikiより:ヤマハポピュラーソングコンテストは、ヤマハ音楽振興会の主催で1969年から1986年まで行われたフォーク、ポップス、ロックの音楽コンテストである。第6回からはアマチュア向けのプロへの登龍門として開催されるようになった。グランプリ優勝者には自動的にレコードデビューが約束され、世界歌謡祭の出場資格を得ることができた。

(2)Wikiより:谷山浩子、八神純子(1974年)、渡辺真知子、中島みゆき、因幡晃(1975年)、佐々木幸男(1976年)、世良公則&ツイスト、安部恭弘(1977年)、佐野元春、長渕剛、円広志、大友裕子(1978年)、チャゲ&飛鳥、クリスタルキング(1979年)、Side by Side(伊丹哲也、十川知司)(1980年) 、雅夢(三浦和人)、きゅうてぃぱんちょす(杉山清貴&オメガトライブ)(1980年)、伊藤敏博、アラジン(高原兄)(1981年)、あみん(岡村孝子)(1982年)、TOM★CAT、辛島美登里(1983年)

 

カテゴリ 音楽

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2023年

6月

07日

宝塚星組 1789-バスティーユの恋人たち-

宝塚星組 1789-バスティーユの恋人たち- 2023.6.2~7.2 宝塚大劇場

壁の飾りをかえました。

 オリジナルはフランスのロックオペラです。宝塚でも2015年月組で初演されました。これを歌上手の礼真琴さんが演じるとなると大変期待が高まっていたわけです。

 しかしながら6/2に開幕したものの、2日目から休演になってしまいました。6/15まで休演が決定しているそうです(6/7時点)。

 出演者体調不良のためということです。みなさん無事に回復され、また舞台に戻られることを願っています。

 うーむ、しかし私がとっていたチケット3回分がバッチリ休演期間に重なっているではないか!ぜひ観たかった、残念なり。何かの機会で後半または東京など観劇したいところです。 (2023.6.7 院長)

 

カテゴリ 宝塚歌劇

 

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2023年

5月

24日

ダブルトラック「ロール・オーバー・ベートーヴェン」

壁の飾りをかえました

The Beatles "Roll Over Beethoven" 1963年 作曲作詞Chuck Berry

2枚目のLP"With The Beatles"B面1曲目です(1)。ビートルズのオリジナルではなく、チャック・ベリー御大の作です(1956年)。ビートルズはレコードデビューする前からライブでレパートリーにしていました。62-63年頃のライブではジョージのテーマ曲になっていました。ジョージの歌にギターソロですからファンにはうれしい一曲です。イントロのギターが始まると客席が熱狂する光景が映像に残っています。ライブではリンゴのドラムもポールのベースもノリノリなんですよね。

 一方レコード録音を聴くと、ライブに比べて随分おとなしい印象です。ジョージは結構クールな感じで歌っていますね。でも演奏に負けない厚みのあるサウンドになっています。これがダブルトラック(オーバーダビング)の効果です。つまりはじめに録音した歌にもう一度同じ人の歌を重ねるのです。このボーカル二重録りは当時画期的なアイデアだったと言われます。同時期62-63年の他のポピュラー音楽と比べれば一聴瞭然です(2)。単一録音またはエコーでふくらましたサウンドとは違います。当時これをやってるグループはほとんどないはずです。この曲でははじめのトラックで演奏と歌を一発録りし、次に歌とハンドクラップ(手拍子)を重ねているようです。なおこのLPでは”All my loving”でポールが自身でハモりをつけています、またジョージの"Don't bother me"もダブルトラックです。録音の工夫をチェックするのはビートルズ鑑賞の醍醐味ですね。

 この曲他にも魅力がたくさん詰まっています。ジョージのギター・ソロはもちろん、ポールのベース、ジョンの正確なリズムギター、リンゴ・スターのドラム、賑やかなシンバル(3)、そして切れのあるホットなフィル・イン、どれもビートを感じますね。

 ビートルズを語るとつい熱くなってしまいすみませんです。LP”with the Beatles”には初期ビートルズの魅力がたくさん詰まっています。機会がありましたらぜひお聴きください。(2023.5.24 院長)

 

(1)日本では写真のようにシングルで発売されました

(2)ロックで初めてダブルトラックを使ったのはバディー・ホリーと言われています。ビートルズ憧れのミュージシャンですね。"Words of love"で使われています。

(3)オープン・ハイハットかもしれません。でもライブ映像をみるとシンバルを叩いていますね。リンゴはシンバルの端をスティック中間部で叩くのが特徴で、ジャズっぽくチンチンと鳴らすのではなくシャンシャンという音色です。

 

カテゴリ 音楽

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2023年

5月

03日

雪組「ライラックの夢路/ジュエル・ド・パリ」

院内の飾りをかえました。

宝塚雪組「ライラックの夢路/ジュエル・ド・パリ」

 トップ娘役夢白あやさんの大劇場お披露目公演です。

 貴族ドロイゼン家の長兄ハインドリッヒ(彩風咲奈)はドイツに鉄道事業を起こそうとする、当初は家のために始めたが、やがて国家と国民のため事業をやり抜きたいと使命感を持つ、多くの障壁を乗り越えていく。一途な気持ちを持って前進する役は彩風さんによく合います(1)。

 そして新トップ娘役の夢白あやさん、本当にかわいい。そこにいるだけで華がありますね。一方、前の宙組からもそうですが、芯の強い女性役を演じると存在感があるのです。しばらくこのトップコンビが楽しみです。

 この劇は多くのテーマが含まれているので1回の観劇だけではなかなか散漫な印象になりそうですが、それぞれのテーマは面白くて結構入り込んでしまいます。

 貴族ドロイゼン家の兄弟の結束。小国の集まりだった旧システムのドイツから統一ドイツ国に移行する時代背景。工業化のプロセス。鉄道事業に必要な技術力と資金調達法の工夫(2)。また女性の生き方と女性の自立とは何か。そしてハインドリヒとエリーゼの恋。長兄ハインドリヒと次男以下と立場の違い。などなど。

 朝美絢さんのカッコよさ、深い演技も見どころですし、和希そらさんの軍服姿と歌もいい。縣千さんは鉄職人の役どころ、鉄工所場面ではすばらしい踊りが見どころです。

 ショーは「ジュエル・ド・パリ」、藤井大介先生のショーらしく派手な味付け+要所に男役の女装あり。和希そらさんのクレオパトラは腹筋バキバキです、歌唱も素晴らしいですねー。中詰めフレンチカンカンは大規模、そして男役重鎮までカンカンに参加。ショー全体としてはパリ関連の歌が多く、曲自体は古くさいかもしれぬがダイスケ先生風味でアレンジの妙です。

この日のベース担当は院長が好きな梶山伊織さん、グルーヴあふれるビートを弾くベーシストさんです。バスティーユの場面、イントロはキャピトルズの”Cool Jerk”(1966年)を彷彿させる、身体の内側からリズムが湧き出てきそうなリズム!しかしそこからフランス国歌ラ・マルセイエーズに移るという。70-80年テイスト楽曲あり、ラテン曲ありカッコイイぜ。

フィナーレ・エトワール音彩唯さんがスゴイ迫力でした、後になるほどテンションが上がる、不安感なし泰然自若、堂々の独唱、一聴の価値あり!

見どころたくさん雪組の舞台、皆様ぜひご覧ください。(2023.5.3追記5.19院長)

 

(1)前作「蒼穹の昴」の梁文秀役、2017年「ひかりふる路」のダントン役

(2)作・演出・振付の謝 珠栄先生が公演プログラムで『ドイツ工業化における鉄道業』(大阪大学経済学部、鴋澤 歩(ばんざわ あゆむ)教授)という本を読んで本作品を書こうと思った、と仰っています。さらに別のページでは鴋澤先生による、19世紀のドイツ国内事情と産業発展と鉄道事業開発について解説が掲載されています。これはかなり勉強になります!ぜひご一読されると劇の理解が深まると思います。

 

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2023年

4月

19日

ジョンの三連符"All My Loving"

The Beatles "All My Loving"1963, Lennon-McCartney 

 三連符シリーズ3回目です。有無を言わせぬ名曲です。どこが三連なのかというとジョンレノンのリズムギターです。

 ロッカバラードと違ってかなり速い、6連だと言う人もいますね。そして1番目と4番目にきっちりアクセントをつけて正確です。ものすごくドライブしています。作曲はポールなのですが、ジョンの三連符ギターがあることでスゴク情熱度が増すのです。

 ギターはリッケンバッカー325です(1)。ギブソンだと重く粘い、フェンダーはキラキラしすぎ、やはりこの三連はリッケンバッカー独特の乾燥した音色がイイですね。楽譜やライブ映像をみると1-4弦しか弾いていないようです。確かにこの速さと軽さを出すには低音5,6弦は不要です。

 さてこの曲は聴きどころがいっぱいあるのです。ポールのランニングベース、楽譜だけみるとただの四分音符ですが4ビートスイングリズムです。リンゴのドラムはシャッフルビートでこれもスイングっぽい感じです。ジョージのソロ演奏はチェット・アトキンス風のカントリーギター(2)。そしてコーラスワークもカッコいいんですよ(4)。どれもこれも溶けあって名曲になったのですね。

 皆様"All My Loving"をぜひお聴きください、そして耳をすましてジョンレノンの三連符ギターにご傾聴ください。(2023.4.19 院長)

 

(1)2枚目の写真。30年前たくさんバイトして買いました。最近はめっきり弾かなくなりました。

(2)ついでにジョージのギター機種はグレッチのカントリージェントルマン。この当時ジョージはカントリーギターの名手チェットアトキンスに憧れていたそうで、同じ機種を使っていたといいます。わかるわかる、ファンなら同じ楽器買いたくなりますよね。⇒(1)もそれです。

(3)気付いた方もいるかもしれませんが、ジョンのギターパート以外はけっこうシックな曲構成になっているのです。ここにジョンの三連符ギターが加わり、ビートと情感が与えられたのですね。

(4)当時ビートルズ得意の録音技術、ダブルトラック(同じ人が2回ダビングで重ねて録音すること、音が分厚くなる)が使用されています。ポールのメインボーカルがダブルトラックです。

 

カテゴリ 音楽

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2023年

4月

05日

宙組トップスター真風涼帆さん

2回連続ですみません

 敬愛するトップスター真風涼帆さん、今回作品カジノ・ロワイヤルで退団されます。スーツと黒燕尾が似合う、立ってるだけで絵になるカッコイイ男役さんです。恵まれた体格そして雰囲気。よく、男役らしい男役、と言われます。アイドル的、王子様的なスターではなく、カッコよさ、重厚さが魅力のスターさんです。(星組若手時代はどうやら王子様路線で売り出そうとしていて、宙組に組替え後重厚路線にシフトしたように思います)独特のセリフ回し、仕草、歌唱、この真風スタイルももう見納めかと思うと惜しまれます。今後この男役芸を継いでくださる方はしばらく出ないのでないかと思います。

 5年7ヶ月のトップ在任期間は平成以後3番目の長さだそうです。この間合計17作、うちコンサート2作とスヴィッツラハウス以外の14作観に行けました。あれもこれも楽しかった。芝居は「男の友情」と「正義」がテーマ、そしてなぜか多い「ロシアもの」、やはり真風さんと言えばこの系統でしょう。そしてショーは「黒燕尾」「ギラギラ」「大人」が似合いますよね。

 観れるのもあと数回かぎり。宝塚というのは誰もがいつかは退団しなければならないのだがやはりさびしいです。 (2023.4.5 院長)

 

カテゴリ 宝塚歌劇 

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作品の思い出 長くてすみません

(宙組トップスター前夜くらいから)

(-2)2017年2-4月『王妃の館』フランス国王ルイ14世(の霊?)、重厚な役が似合う。朝夏さん退団のときルイ14世のセリフを使った。『VIVA! FESTA!』宙組名物「ソーラン宙組!」が生まれた瞬間です、真風さんの「ドッコイショー」の迫力は忘れられません。

(-1)17年8-11月『神々の土地』フェリックス・ユスポフ、男の友情に泣いた。ロシア物。『クラシカル ビジュー』前トップ朝夏さん退団公演。真風さんが朝夏さんを持ち上げるリフトに驚き。朝夏さん退団さよならショーでは真風さんが男泣きをこらえるシーンあり、感動しました。

(宙組トップスター就任)

(1)18年1月『WEST SIDE STORY』プレお披露目。有名ミュージカル。純粋な心を持つ若者トニー役。抽選で真風さんサイン色紙が当たったのも良い思い出。

(2)18年3-6月『天は赤い河のほとり』カイル王子、大劇場お披露目公演、2番手芹香さんとのバディ感あふれる劇。『シトラスの風-Sunrise-』アモールでは真風、芹香、愛月、星条4名の重厚な男役達が銀橋渡りで壮観、明日エナジー、サンライズと名曲を迫力の真風節で歌う!

(3)18年10-12月『白鷺の城』和物ショー、陰陽師・武将・江戸祭禮の男を演じる。『異人たちのルネサンス』ダ・ヴィンチ、好青年役。芹香メディチと対決。

(4)2019年2月(博多座)『黒い瞳』ニコライ、愛月プガチョフと男の友情劇、泣きました!ロシア物。『VIVA! FESTA! in HAKATA』再びソーラン節、博多座、客席降りでは地鳴りのようなグルーヴ、観れてよかった。

(5)2019年4-7月『オーシャンズ11』院長が最も好きな作品。ダニー・オーシャン役、セリフも仕草も衣装も最高にカッコイイ。1幕終わりの後ろ姿、背中で男役を演じる姿。2幕ラスト客席後方から現れる真風さん。通路真横を通り過ぎたのが忘れられない。芹香ラスティと男の友情+相棒劇も見どころ。好きなセリフ「25ドルのチップを6枚」「元気出せよ、まだ1か月あるぜ!」

(6)19年8-9月、『追憶のバルセロナ』男の友情劇、スペイン貴族の子息で軍人でもある真風フランシスコと芹香アントニオ、そして瀕死のフランシスコを助ける桜木ロベルトの友情に感動。『NICE GUY!!』(全国ツアー)スーツ、黒燕尾が似合う。客席降りで真風さんとハイタッチできたのもいい思い出。

(7)2019年11-20年2月『El Japón(エル ハポン)-イスパニアのサムライ-』 和洋折衷劇。剣士蒲田治道、剣の道を極めんとする求道者の役が似合う。芹香アレハンドロとの友情にしみじみ。剣の闘いシーンは迫力。『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』藤井大介先生作、ウィスキーをテーマにしたショー。登場シーンからカッコ良すぎ。ギラギラ衣装が似合う。男役真風涼帆の魅力がたっぷり詰まった名作。

(8)20年8-9月『FLYING SAPA-フライング サパ-』オバク役、数か月コロナ休演から再開の作品。宝塚に珍しいストレートプレイ、ウエクミ先生の作品は難解だった。

(9)20年11-21年2月『アナスタシア』ディミトリ。詐欺師だが純真な心を持つ好青年役。これもロシア物。

(10)21年4月『ホテル スヴィッツラ ハウス』 ロベルト・フォン・アムスベルク。コロナ休演でこれだけ観れなかった、残念。DVDで観劇。

(11)21年6-9月『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』シャーロック・ホームズ、名探偵で英国紳士で理知的かつ正義感あふれる男。サイコパス的な悪役芹香モリアーティと対決する。剣術の心得があったり地下組織で世を征服する計画などは「カジノロワイヤル」に引き継がれる。『Délicieux(デリシュー)!』

(12)21年11-12月『バロンの末裔』エドワード/ローレンス2役、貴族的な潔さでダンディに生き抜く姿、真風さんの魅力が出ている。『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』再演、これ観たくて福岡まで行きました。

(13)22年2-5月『NEVER SAY GOODBYE』 ジョルジュ役、正義感と友情を演じる。

(14)22年8-11月『HiGH&LOW-THE PREQUEL-』山王連合のリーダー、コブラ役、彼らの正義を貫く。芹香ロッキーとは敵同士だが友情もある。潤花ちゃんとのラブストーリーが爽やか。『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』退団を示唆するシーンあり泣けます。

(15)23年3-6月『カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド〜』ジェームズ・ボンド役。退団作。前回ブログ参照。これもいわばロシア物。

2023年

3月

15日

宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル」

宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル」

 宙組トップスター真風涼帆さん、潤花さんの退団公演です。

 007カジノ・ロワイヤルの宝塚版、原作や映画とは異なる話に作られているようです。歌で話を進めていく形式で楽曲が多いです。話はあまりシリアスでなく、戦闘やアクションも過激ではありません。コメディー要素が多く、過去作品のパロディがたくさん出てきますから、宙組を観てきたファンは感慨深いです。純粋にエンタテインメントとして楽しめる作品です。3時間があっという間ですよ。

 とにかく真風さんの男役を存分に楽しめる作品です。スーツ、タキシード、トレンチコート、革ジャケット・・・と真風さんのためにあるような衣装もカッコイイですし、シャンパーニュ、マティーニ、シガレットが似合う。台詞も歌唱も真風節が満載。そして銀橋にて斜め45度で眼をカッと見開き見栄を切る真風ポーズ。どれも円熟の男役芸集大成です。真風さんはよく「宝塚らしい男役」と評されます。これだけ重厚なトップさんはこれからしばらく出ないのでないかと思います。しっかり眼に焼き付けておきたいと思います。

 潤花ちゃん、雪組時代にはやや目立たなかったかもしれないが、宙組に組替えし真風さんの隣にきて輝きが増しました。魅力が開いた大輪の花です。潤花ちゃんの陽パワー本当に可愛かった!宙組に来て本当にいい役を務められました。

 二番手芹香さんは敵役ル・シッフル、いつもながらものすごい迫力の演技です。ラスボス感を演じておられます。懐かしのラスプーチンまであります!もちろんいつもの芹香さん熱唱も聴きどころです。

 寿つかさ組長(すっしーさん)が今回退団されます。宙組創設時から在籍され、そして長年組長を務められました。すっしーさんの見せ場が随所にあって大きな拍手が上がりました。

 紫藤りゅうさんも退団、今回はCIA諜報部員を演じます、これがノーブルな空気の紫藤さんにぴったり。真風さんをスマートに手助けする場面や、カジノの勝ち金でゴージャスに遊ぶなど紫藤さんのカッコよさが出ています。3国、英(真風)、米(紫藤)、仏(瑠風)の諜報部員の並びはスタイリッシュで高身長な宙組らしいシーンです。

 本作品、その他も見どころ沢山です。若翔りつさんのツヴァインシュタイン博士、マッドサイエンティストの役作りと歌が魅力。そして優希しおんさんキレキレな踊りは眼が離せません!ぜひ注目してください。

 皆様機会がありましたらぜひ宙組の舞台をご覧ください。(2023.3.15院長)

いつもは各組のポスターを飾っていますが、今回は院長が敬愛する真風さんの過去作品を並べております。

 

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2023年

3月

01日

三連符の魅力Only You, Great Pretender

壁の飾りをかえました

ザ・プラターズ”Only You”1955年作曲・作詞Buck Ram

 三連符ってどんなの?と聞かれたら、日本の曲だと津軽海峡冬景色、洋楽なら”Only You”でしょう。

 これこれ!このイントロですよ。この三連符から盛り上がりますね。リード歌手のトニー・ウィリアムズ、ファルセットが本当に気持ちよく抜けます!そしてきれいなドゥーワップコーラス。バックの演奏でずっと三連符が鳴っているんですね。ヴォーカルは4分の4で、バックが三連符。ハチロク(8分の6)とか8分の12と言われることもあります。三連符をベースにしたドゥーワップやロックやポップスのことを「ロッカ・バラード」と言ったりします。三連符って哀愁や情熱の感じがでますよね。

 "Only You"はビルボードR&Bチャートで7週連続1位、全米ポップチャート5位まで上昇し、大ヒットしたそうです。プラターズは続いて同じ年(55年11月)に「グレート・プリテンダー」"The Great Pretender"を発表し56年にR&Bと全米ポップチャート両方とも1位に輝きました。この曲も三連符のドゥーワップでいい曲なんですよ。(1)

 皆様、機会がありましたら三連符の名曲"Only You", "The Great Pretender"ぜひお聴きください。(2023.3.1 院長)

 

(1)2曲とも映画「アメリカングラフィティ」で印象的に使われていました。若いとき何十回いや百回以上観ましたからシーンを思い出します。次の曲へのつながりも、ウルフマンのDJも覚えました、懐かしいなあ。

 

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2023年

2月

01日

魅惑の三連符「津軽海峡・冬景色」

壁の飾りをかえました。

石川さゆり「津軽海峡・冬景色」昭和52年作詞:阿久悠、作曲:三木たかし

 まだまだ寒い日が続きますね。北国の歌を聴いています。石川さゆり19歳時の歌唱です、上手いですね~!若いのにこんなに力強い情感が出せたなんてスゴイです。

その情感は歌の力以外にも、曲にいろんな仕掛けがあるからなんですね。

 まずは特徴的な三連符リズムです。うえの/はつの/やこう/れえしゃ/おりた/ときか/らー、見事に3個ずつです。大アクセントを奇数節の1個目、中アクセントを偶数節につけます。三連符はアクセントがないとダラっとしてしまいます。これ洋楽でいうロッカバラードのリズムです、昔のリズム&ブルースやオールディーズによく使われました。三連符は強い情念を伝える力を持っています。

 メロディーですが、この曲は演歌ということにはなっていますがヨナ抜き(2)ではありません。Aマイナー(イ短調、主音ラ)です、白鍵盤をラから順番に弾くとこれになる。7番目の音ソは1回だけ出てきます、ただしソ#です(3)。ヨナ抜きほど日本風ではないメロディーでちょっとメランコリックな洋楽的な響きも残すのです。そしてコード進行が凝っていてツー・ファイブ・ワン(IIm7-V7-I)進行が使われています。ジャズでよく使われると言います。「青森駅は」の次「雪のなか」、最後の「津軽海峡冬景色」のところがBm7♭5→E7→Amです。定番のIV-V-I進行(4)の最初のIVを代理コードIIにしたヤツです。定番のIVよりもちょっと不安定さがあってカッコよくなり、さらにルート音がシ→ミ→ラと5度ずつ下がることによって、IV-V-Iより力強さがでるとされています。この進行で曲が伝えたい情念がさらに強く表現されるのです。

 作曲の三木たかし先生は、三連符、西洋音階の短調、ツーファイブ進行など様々な技巧を盛り込んでおられるんですね。そして阿久悠さんの作詞と石川さゆりさんの歌唱がみごとに溶け合った名曲です。

 今ではいわゆる「演歌の代表曲」的に思われていますが、こうやって聴くとなかなか洋楽のエッセンスも取り入れていてカッコイイなあと思います。そういえばこの時代の石川さゆりさんはドレスで歌っていました(5)。歌番組、レコード会社、芸能事務所も「石川さゆりは和服演歌とは一線を画しポップスで売り出す」という認識であったのだろうと推測されます。

 皆さま機会がありましたらこの三連符の名曲ぜひお聴きください。(2023.2.1院長)

 

(1)その昔ギターを練習したとき初心者向けのギター教本で、三連符のページで「津軽海峡冬景色のリズムです」と書いてありました。誰もが歌えるほど浸透していたのです。

(2)ヨナ抜き音階:前回ブログ「函館の女」を御参照ください

(3)ちなみに7番(ソ)を#半音上げた短調は和声的短音階と言って、主音(ラ)で終止させる力を強める働きがあります、だからフィナーレの「ふゆげーしき」が「し(ソ#)き(ラ終止)」となっているのです。

(4)カデンツ進行:安定して終止させる和音進行、数種類定番がある。Iは主音のドが根音ドミソ和音これが最も安定、IVは4番目のファが根音ファラド、Vは5番目ソが根音ソシレ。

(5)昭和52年2/28歌のベストテン、12/20FNS歌謡祭優秀歌唱賞、12/31日本レコード大賞・歌唱賞、12/31紅白歌合戦、この辺すべて洋装です。昭和63年頃までドレスで歌っている画像が残っています。

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2023年

1月

13日

ヨナ抜き音階「函館の女」

壁の飾りをかえました。

北島三郎「函館の女」昭和40年作詞:星野哲郎、作曲:島津伸男

 寒くなると北国を歌った曲を聴きたくなります、なぜでしょうか?。寒さを忘れるため夏の曲でもよさそうなのに。さて冬らしい曲のうちなぜサブちゃんなのかというと、前々回クリスマスソングの「ママがサンタにキッスした」を聴いているときからずっと「函館の女」が頭をぐるぐる回って耳から離れないからです。

 理由はわかっています、出だしが途中まで同じ音階だからです(1)。これがヨナ抜き音階とかペンタトニックと言われるアレです。ヨナ抜きとは、通常のドレミファソラシの7音から4番目ファと7番目のシを抜いた5音階です。日本で古くからある音階であり、日本的メロディーになると言われています。「ママがサンタに」はヨナ抜きで始まり途中からリズム&ブルースを交えた通常音階になりますが、「函館の女」は終わりまで完全にヨナ抜きです(2)。

 「函館の女」サブちゃんの歌唱は演歌の歌い方ですし、曲もヨナ抜き音階だし、確かに演歌に分類されます。しかし演奏をよく聴いてみると、いわゆる「演歌」でない部分があります。バックの演奏は明るいんですよ。管楽器はラテンの響きで、北国の暗さはありません。ギターなんかポールアンカ「ダイアナ」、ニールセダカ「オー、キャロル」のままですよ!

 これは昭和40年時点ではまだ「演歌」が確立されていなかったからと考えられます。以前の記事で書きましたが、「演歌」は昭和40年代に商業的に作られたもので、それまでは単に流行歌、歌謡曲でしたから大衆が好むものなら何でも様々なリズムやスタイルを取り入れた曲が多かったわけです。「函館の女」はそんな過渡期の曲と言えましょう。いずれにしてもサブちゃんの名歌唱とともにヨナ抜き音階と陽気なバックとのバランスが大きな魅力です。

 皆さま寒さ厳しい折です、北国に思いを馳せながらぜひこの名曲をもう一度お聴きください。(2023.1.18院長)

 

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(1)はーるばるきたぜはこだててへー(ドーレミソラドレミミミミミー)、I saw Mommy kissing Santa Claus (ドーレミソラド シソミ) ついでにテンプテーションズの「マイガール」まで脳内で同時に鳴ってきます。これもペンタトニックです。

(2)ピアノの黒鍵を順に弾くとヨナ抜き音階になっています。古畑任三郎が「函館の女」をピアノの黒鍵だけで弾くという有名な場面があります。試しにやってみてください。

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2023年

1月

04日

宝塚花組 うたかたの恋/ENCHANTEMENT

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

壁の飾りをかえました。宝塚花組「うたかたの恋/ENCHANTEMENT」

 うたかたの恋は初演から40年、大劇場の再演は30年ぶりに上演されました。話は「マイヤーリンク事件」という実際にあった謎の情死事件をもとにしているそうです。明るい物語ではありません。現代向けに潤色したといえどもさすがにスローに感じます。しかしとにかく美しい。主役ルドルフ柚香さんの軍服・礼装姿、立居振舞い、そして影ある芝居に耽美的な魅力が発揮されます。そしてマリー星風まどかさんの純真で儚い姿が寄り添うという、二人の組み合わせも美しい。舞台セット、花組たちの衣装ふくめ全体が本当に美しいです。

 今回で花組から専科に異動される水美舞斗さん、自由人であり友情を大切にするジャン・サルヴァドルの人情味あふれる芝居がいい!見どころは、舞踏会でルドルフの正妻ステファニー妃の意地悪からマリー(星風)をダンスで守る場面です、友情に厚い男気に感動いたします。

 この劇はともすれば少人数芝居になりそうですが、舞踏会や酒場シーンを取り上げ、多くの花組組子の登場機会があるのも嬉しい所です。舞踏会はドレスに黒燕尾、酒場では軍服と「観たい姿」の宝庫です。

 ラストシーン影ソロが、龍季澪さんと花海凛さん、すばらしい歌唱です。龍季さんは101期男役8年目で歌ウマとして着実に定評あります。花海さんはなんと108期1年目ですこれからが楽しみです。

 後半はENCHANTEMENT、香水をテーマにしたショーです。

演出の野口先生はブロードウェイ的な華やかなショーが特徴だと思います。今回もスター、衣装、舞台装置どれをとってもまさに今の花組の華やかさを活かしたショーです。

そして男役の女装も大変美しい!プロローグのエイト・シャルマント。そしてロケットダンスリーダーの希波らいと(103期)さん、超絶スタイルが良い、ファッションモデルかと思うほど。水美舞斗さん(95期)と女装の聖乃あすか(100期)さんの美しい取り合わせも見どころです。

 二番手の水美さんは本公演で花組から専科に異動されることもあり、いいシーンが沢山ありました。銀橋で同期の柚香さんと二人でカッコよく組む様は本当に男役の極みです。星風まどかちゃんを高速リフトするシーンでは長い拍手が湧きおこりました。

 デュエットダンスの影ソロは再び龍季さん、テキサス州出身で英語歌唱が抜群!いい歌聴かせていただきました。

 皆様機会がありましたら花組の舞台をぜひご観劇ください。(2023.1.4 院長)

 

(1)個人的には酒場シーン大好きで、登場するお酒を双眼鏡で観察しています。ロマネコンティやシャンボールニュジニーやラフィットが登場します(ラベルが1880年代のものと違うと思うけど)。そうそうマイヤーリンクの別荘で馭者のブラットフィッシュ(聖乃あすか)がトカイワインを勧める場面、トカイはハンガリーの名産ワインでオーストリア・ハンガリー帝国にちなんだものなんでしょうね。

 

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