2022年

2022年

12月

14日

クリスマス「ママがサンタにキッスした」

壁の飾りをかえました。

 ジャクソン5「ママがサンタにキッスした」1970年原題”I Saw Mommy Kissing Santa Claus” 作詞・作曲:トミー・コナー

オリジナルは1952年7月ミシシッピ出身のジミー・ボイド少年の録音、その後数多くの歌手がカバーしました。このジャクソン5バージョンが最も有名ではないでしょうか。

 歌手は天才少年マイケル・ジャクソン(1)。録音したのはまだ12歳の誕生日前です。もう何も言わずに、かわいらしい、のびのびとしたマイケルの声を聴いてください!

 歌詞の内容はクリスマスのほほえましいお話です(2)、題名からでもわかりますよね。よく聴いてみると曲の最後で、マイケルが「もうみんな信じてよ、本当に見たんだから」と言いますが、家族はまるで取り合ってくれません。ここもかわいいですね。幸せいっぱいの歌です。

 ジャクソン5のクリスマス・アルバムもあります。いい曲がいっぱいです。皆様ぜひさがしてお楽しみください。

 2022年もブログにおつきあいくださりありがとうございました。皆様よいクリスマスをお過ごしください、そして幸せな新年をお迎えください。2022/12/14(院長)。

 

(1)写真左上の少年です。マイケルジャクソンは1958年8月29日生まれ、この曲を含むLP”Jackson 5 Christmas Album”は1970年10月15日にリリースました。録音は12歳の誕生日前といわれます。

(2)歌詞に I saw Mommy kissing Santa Claus/ Underneath the mistletoe last night. とあります。mistletoeとはヤドリギのことだそうです。英米ではクリスマスにヤドリギの下にいる相手にキスをする風習があるそうです。もともとスカンジナビアの伝説が由来で、ヤドリギの下で出会った男女はキスをしなければならない、そしてヤドリギの下でキスをした二人は幸せになれる、というものだそうです。なるほど、だからUnderneath the mistletoeなのね。これまた幸せな話ですね。勉強になりました。

 

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2022年

11月

30日

秋の夜中に(2)「夜明けのスキャット」

壁の飾りをかえました。

由紀さおり「夜明けのスキャット」昭和44年 作詞:山上路夫、作曲:いずみたく

 不思議な曲です。ワンコーラスまるまる歌詞なし、スキャットだけという思い切った曲です。2番は歌詞ありです。透き通る歌声、夜にぴったりです。

 もともとスキャットの部分だけ「夜のバラード」(1)という夜のラジオ放送のテーマ曲に使われたそうです。由紀さおりさんはデビュー当初ヒット曲がなくCMやTVラジオ主題歌の仕事が多く、明治製菓のCMも歌っていました。あの有名な「チョッコレート、チョッコレート、チョコレートは明治」も由紀さんです。このラジオ番組は明治製菓の提供だったので由紀さんがテーマ曲の歌手に誘われたということです。作曲のいずみさんが走り書きで書いた楽譜を渡され、その場で「適当に言葉をつけて歌って」と言われたそうです。それでスキャットになったわけです。こんないい加減な経緯で出来た曲ですが番組で放送してみると、問い合わせが殺到しました。そこで歌詞もつけてレコード化されたのです(2)。昭和44年3月10日にリリースされ、100万枚以上の大ヒットになりました。そして同年末の第20回NHK紅白に初出場しています。

 後年、米国のジャズオーケストラ”ピンク・マルティーニ”と由紀さんのコラボアルバム「1969」が世界的大ヒットし(3)、再び「夜のスキャット」が注目されました。

 皆様、静かな夜にぜひ由紀さんのスキャットをお聴きください。2022/11/30(院長)

 

(1)東京放送(現在のTBS)放送期間:昭和41年6月20日 - 46年9月30日、放送時間:月-金 22:40-23:00

(2)この経緯は由紀さおり著「明日へのスキャット」集英社にしるされています。

(3)2011年10月にリリース。カナダ、シンガポール、米国、ギリシャ、日本でチャート獲得。他の「ピンクマルティーニ」作品もおすすめです。院長お気に入りのバンドです。

 

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2022年

11月

16日

宝塚星組「ディミトリ/JAGUAR BEAT」

壁の飾りをかえました。

宝塚星組「ディミトリ/JAGUAR BEAT」宝塚大劇場2022年11月12日〜12月13日

 13世紀1220年頃のジョージア(旧グルジア)を舞台としたドラマティックな歴史ロマン。これはとてもいい話です。夫婦愛そして国家への愛がテーマになっていて感動します。中東地域で13世紀って馴染みない時代背景ですが、事前知識がなくともわかりやすい劇でした。4つの国、ジョージア王国、ルーム・セルジューク国、モンゴル帝国、亡国ホラズム国、それぞれのもくろみと事情がある。運命に翻弄されるディミトリ(礼真琴)とルスダン(舞空瞳)の姿をみて泣くお客さん続出です。

 いつものことですが礼真琴さんは歌がうまい!歌ウマは正義です。そして楽曲もすばらしかった。歌唱力のある方には難しい曲を当て舞台はさらに良くなる好循環。ヒロイン舞空瞳さん、踊り上手で芝居の表現力も素晴らしいですね。可愛い少女が、女王の責任を負う、そしてディミトリへの愛が変化してゆく様はハラハラとします。

 瀬央ゆりあさん、何と前半45分間出番なし。チンギスハンに追い詰められたホラズム国の帝王ジャラルッディーン役。戦争好きの非道な王と観客に思わせておいて、実際に登場してみると、強くて道理のわかる懐深い大人物、というカッコイイ男をこなしておられます。これは実際に劇を観ていただきたいところです。

 綺城ひか理さんは国王ギオルギ4世を演じます。出番は前半だけですが、妻に対する愛の形、国家への愛とは何か、ディミトリに見せる。これが後半への伏線になっているのですね。妻役の有沙瞳さんとのかけ合いもすばらしい。綺城さん、歌が上手い、そしてますます重厚感が出ておられます。

 劇だけでもたくさん話したいことがありますが、長くなるのでショー「JAGUAR BEAT」に移ります。ジャガービート、これはとにかくド派手で賑やかなショーです。このギラギラした感じは何か覚えがあるなと思っていたら、「歌劇」11月号に「デビッド・ボウイのジギースターダストみたいに」と書いてありました、確かにそうです!ショーの楽曲もめちゃくちゃ良い!テーマ曲は特撮ヒーロー的な曲の作り方そして楽器の使い方によせている気がします。ほかにはロック系の曲も多く、これらは80年代邦楽のテイストでしょうか。ショーを通してビート、疾走感が前面に押し出されています。あっという間の55分間です。

 院長の好きな天華えまさん、ジャガーの衣装で登場、華麗な舞を披露されます、カッコイイです、さすがスター天華さん!別衣装で銀橋ソロ歌唱もあって大変見所です。

 そしてカッコよさでは朝水りょうさんもすごいです。今回超短髪の金髪にしてシャープさが際立っています。

 若手も活躍しています。青風希央クン(105期4年目)、敵国に攻め込まれた市民の役、踏絵を拒否して斬られる場面でセンタースポットライトを浴びて見事に散ります!ショーでも長身を生かしたダンス姿カッコイイです。これからの活躍が楽しみです。

 総踊り的な多人数の場面が多いです。そのため、あの人も見たいこの人も見たいので眼がたりないです。回数をたくさん観たいところです。

 とにかく芝居もショーも見どころたくさん。皆様機会がありましたらぜひ星組の素晴らしい舞台をご覧ください。2022/11/16(院長)

 

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2022年

11月

02日

秋の夜長に「夜間飛行」

 

壁の飾りをかえました。

ちあきなおみ「夜間飛行」昭和48年作詞:吉田旺、作曲:中村泰士

 さて前回までにお話した、1977年前後に生まれたシティポップは複雑な技術を用いた新しい曲のジャンルでした。しかしその少し前の時代からすでに職業作家による凝った作りの曲がちらほら出ています。この吉田、中村コンビによるちあきなおみ作品もその一つだと思います。

 昭和47年レコード大賞の「喝采」そして48年2月「劇場」に続く本作48年6月「夜間飛行」はのちにドラマチック歌謡3部作と言われるようになりました。どれも名作です。 

 歌謡曲でもないジャズでもないロックでもない、しっとりした曲調で、いわばヨーロピアンでしょうか。ベースラインがかっこいいんですよね。そしてオーケストラも流麗。間奏でフランス語機内アナウンス(1)が一気にドラマの世界へ惹きつけてくれます。パリ、オルリー空港(2)に着陸前、揺れながらゆっくり高度を下げる機体、窓越しの情景が広がります。ひとつのドラマが進んでいくかのような曲作り。そしてちあきなおみさんの歌唱は超絶表情豊か、劇を観ているかのようです。

 秋の夜長、音楽をじっくり聴くのにによい季節です。皆様ぜひちあきなおみさんの名作をご鑑賞ください。 (2022.11.2院長)

 

(1)「皆様、当機は間もなくオルリー空港に到着いたします。眼下にパリの明かりがご覧いただけます。弊社をお選びいただきまことにありがとうございます。それでは良いご旅行を、さようなら。」

Mesdames et messieurs, dans un moment nous arriverons à l'Orly. Nous apercevons une lumière de Paris. Nous vous remercions d'avoir choisi notre compagnie. Bon voyage. Merci. SAYONARA.

(2)オルリー空港は、シャルルドゴール空港ができる前のパリの国際空港です。昔の本や映画なんかに出てきますね。オルリーの名が出てくるのも現代に聴くとノスタルジック。

 

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2022年

10月

19日

シティポップの時代(2)「真夜中のドア~Stay with me」

壁の飾りをかえました。

松原みき「真夜中のドア~Stay with me」昭和54年作詞:三浦徳子、作曲:林哲司

 近年のシティポップ再評価の流れでこの曲は外せないと言われています。作曲の林哲司さんは昭和54年8月に竹内まりや「September」、続いて11月に本作品をリリースしシティポップの世界で有名になりました。

 この時代のシティポップの特徴がよく感じ取れる曲で、ファンクのリズムに跳ねるベース、カッティング・ギターとオシャレな感じです。シティポップの前に大流行したディスコ・ソウルほど重くなく、軽快なAOR(adult oriented rock)を体現した楽曲です。松原みきの歌唱はジャズヴォーカルをベースにして少しハスキーながら伸びのある声質です。何と録音時19歳7か月!若さ溢れるパワーがありその一方で大人さの面もある魅力的な声です。

 松原みきさんはこの時期大阪のMBSヤングタウンというラジオ番組に出演されていました。確かあのねのね原田伸郎さんと一緒だったと思います。おそらくこの曲は40年ぶりに聞いたわけですなぜか鮮明に覚えていて不思議に感じたのですが、きっと昔ラジオで何度も聴いたのでしょう。

 当時シティポップに興味はなく、ラジオでかかっているのを聴き流していただけです。いま改めて聴きますと凝った曲作りに驚きます。

 皆様、ぜひあの頃のシティポップをお聴きになってみてください。(2022.10.19院長)

 

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2022年

10月

05日

雪組「蒼穹の昴」

壁の飾りをかえました。雪組「蒼穹の昴」宝塚大劇場2022年10月1日~11月7日

 浅田次郎さん原作の舞台化です。まず漢字が読めなかった。「そうきゅうのすばる」です。清朝末期1886~98年の話です。日本同様、近代化を迫られた中国版の幕末~維新時代みたいな世の中を描いています。

 トップ彩風さん演じる、文秀(ウェンシウ)は田舎から科挙に首席合格する優秀な若者です。受験生の頃は前作「夢介」のように田舎っぽい喋り口調ですが、官吏に登用され、国の改革に使命感をもち、仲間と改革に奮闘する、その過程で堂々とした話し方に変化してきます。このあたりの役作り、彩風さん上手いです。以前の作品「ひかりふる路」ダントン役、「フォルテシッシモ」ナポレオン役に通ずるものがありますね。

 娘トップ朝月希和さんは玲玲(リンリン)役です。健気な役を演じます。今回で退団なのにやや見せ場が少ないところがちょっとかわいそうか。

 春児(チュンル)朝美絢さんは綺麗で可愛く健気なキャラクターを好演されます。京劇をみごとに舞うのも見どころですね。

 科挙二等合格者の順桂(シュンコイ)和希そらさん、改革派の同志。持ち前の低音イケメンボイスで、役柄の強い信念が表れています、でも信念強すぎて暴走してしまうのです。和希さんいつもながら歌唱がいい! 

 院長の好きな縣千さんが光緒帝(ツァイテン)を演じます。若くて高貴な感じがぴったり。若い皇帝の苦悩がよく出ています。縣さん体格が良くてダンサーなので座ってる場面が多いこの役はもったいなかったかな?

 科挙合格三等、王逸(ワンイー)の一禾あおさんが活躍しています。102期若手ながら彩風さん和希さんと科挙トップ3の場面は芝居も歌も堂々としたものです。凪七さん(李鴻章)との掛け合いもいい感じです。

 それと特筆すべきは朝美さんと同期の天月翼さんの老人役!安徳海(アン ドーハイ)。元宦官、紫禁城を追い出され、今は盲目の胡弓弾き。鬼気迫る演技です。春児の運命と大きく関わる重要な役でうまかった。

 芝居全体としては、長編小説を圧縮した関係で多くのエピソードをつなげることになり、二幕長時間のわりに盛り上がりに欠ける印象でした。主要人物だけの場面が多くて、中堅以下の出番が少なく影が薄くなっています。さらに、西太后と玲玲をのぞけばほぼ男役だけで話が進行するため、娘役に至っては台詞ある者は数名だけとちょっとさびしいですね。

 とはいえ本公演、舞台装置が素晴らしくきらびやかです。そして衣装も一つ一つ細工が施され手が込んでいます。西洋物よりも豪華じゃないでしょうか。皇帝謁見場面、総踊り場面や京劇場面は絢爛豪華で迫力がありますので見所です。ぜひオペラグラスで細かいところもよく見てください。

 皆様、機会がありましたらぜひ雪組の公演をご観劇ください。(2022.10.5院長)

 

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2022年

9月

13日

シティポップの時代「SEPTEMBER」

壁の飾りをかえました。

竹内まりや「SEPTEMBER」昭和54年作詞:松本隆、作曲・編曲:林哲司

 日本のシティポップが世界で再評価されているそうです。「シティポップ」とは欧米の音楽の影響を受け洋楽志向の都会的に洗練されたメロディや歌詞を持つポピュラー音楽、とされています(1)(2)

 当時「シティポップ」という呼び名はなくて、フォークもロックもまとめて「ニューミュージック」だったように思います。後年になって「シティポップ」の名前がつきました。ロックやフォーク寄りではなく、アメリカ西海岸のAOR(adult oriented rock 大人向けのムードある優しい洋楽)に近いサウンドを日本のミュージシャンが目指していたのですね。そしてなんと40年たった2010~2020年代から外国で日本のシティポップが注目され、Youtubeなどで爆発的に流行しているそうです。それまで日本の音楽は外国のマーケットに出ることがなく入手困難、そしてそもそも日本語の壁があるので検索すらできませんでした。しかしネット時代が到来、動画サイトの普及でアクセスが容易になり、世界の音楽マニアが日本の70-80年代「シティポップ」を発掘することになったのです(2)。

 さて竹内まりやさんは当時、慶応大学在学中、軽音サークル「リアルマッコイズ」(3)に所属し音楽活動をおこない、メジャーデビューしました。この「SEPTEMBER」は3枚目のシングルです。夏休みが終わり9月になって失恋するという悲しい内容の歌詞にたいして、瀟洒なサウンド、カッコイイコード進行、竹内まりやの爽快なボーカル、そしてコーラスワーク(4)がほんとお洒落です。

 シティポップが描くのはちょっと現実離れしたお洒落な世界です。当時バブル時代に向かっていた西側の東京の空気を映していると思います。竹内まりやさんその人も、慶應大学で軽音サークルでいいとこの子でミスコンテスト受賞で・・・と別世界です。

 たしかにあの頃はこんな音楽がよくラジオから流れていたなあと思い出します。当時は何だかカッタルイ感じに捉えてよく理解できませんでしたが、大人になって聴きなおしてみるとカッコいいサウンドです。

 秋になってまいりました音楽をじっくり聴くのにによい季節です。皆様ぜひシティポップをご鑑賞されてはいかがでしょうか。 (2022.9.14院長)

 

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(1)Wikipedia:大瀧詠一、山下達郎、吉田美奈子、荒井由実、竹内まりや、大貫妙子、南佳孝などがシティ・ポップの基盤を作り上げていったとされる。

(2)詳しくはレコード・コレクターズ2022年9月号「シティ・ポップの再定義」、2020年6&7月号「シティ・ポップの名曲ベスト100」、2018年3&4月&9月号「シティ・ポップ」特集をご参考にしてください。

(3)リアルマッコイズには杉真理さんもいたそうです。スゴイ!

(4)コーラスにEPOさんが参加しています。なんとB面の「涙のワンサイデッド・ラヴ」のコーラスは山下達郎さん(のちに竹内さんと結婚)&吉田美奈子さんと豪華ですね。

 

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2022年

8月

31日

宙組「HiGH&LOW/Capricciosa!!」

壁の飾りをかえました。

宙組公演『HiGH&LOW ―THE PREQUEL―』『Capricciosa!!』

ハイ・アンド・ロー ザ・プリクエル、カプリチョーザ と読みます。

 宝塚とLDHの初コラボ作品、LDHというとケンカ、バイオレンス映画だったような。宝塚でどうやって表現するのか気になっていました。

 大筋ではコブラ(真風涼帆さん)とカナ(潤花ちゃん)のラブストーリーが軸になっていて、それに不良グループの話が交錯する構成で、宝塚として王道な話でした。

 主役のコブラは山王連合のリーダーを真風涼帆さんが演じます。真風さん男役中の男役、すばらしい。今回は浴衣姿もあって粋です。潤花ちゃんはコブラのことを好きすぎるカナを演じてかわいいですね。

 オープニング5つの不良グループの登場場面は各グループが大階段でパフォーマンスを繰り広げる華やかなショーになっています。とくに桜木みなとさん率いる「RUDE BOYS」のがストリート系ダンスがアクロバティック!バレエの名手、優希しおんさんが難度高い踊りを見せてくれます。

 芹香斗亜さんは「White Rascals」のリーダーROCKYの役。芹香さんは芸達者で、睨みを利かして大変な凄味を醸し出します。見た目もセリフもめちゃくちゃ恐いです。しかし人間的には「いい人」なのです。夜の仕事で働く女性たちを守ったり、安心して働けるよう自前でクラブを設立したり、コブラと和解したり、災害時に来客の安全を最優先したり。

 SWORDの他グループも基本的にはいいヤツです。「RUDE BOYS」のリーダー、スモーキー(桜木みなとさん)は貧民街を守っています。瑠風輝の「達磨一家」、鷹翔千空が番長の「鬼邪高校」も各自の正義を通しています。

 そんな中で本当に極悪なのが「苦耶組(くじゃく)」というグループの頭、リンです。そんなサイコパス役を今回で退団の留依蒔世さんが演じます。こういう悪役を迫力で演じれるのが留依さんのスゴイところです。最後はコブラ真風さんとサシで対決します、男役集大成と言えましょう。

 後半のショーは放浪の伊達男・カプリチョーザ(真風さん)がイタリア各地を旅するという話。藤井大介先生の演出は今回もアツいです。藤井先生といえば男役に女装させることが特徴です。今回はベネツィアのゴンドラで桜木さんが女装します。真風さんが桜木さんをリフトする場面もあって注目です!ダルマ姿の風色日向さん、亜音有星さんも美しい。ロケットダンスではまたも優希しおんさんが超絶踊りを披露します。

 また今回は宙組歌手の聴かせ処が満載です。若翔りつさん、朝木陽彩さんのペア、瑠風輝さんのソロ歌唱、桜木さんの歌も定評あるし、芹香斗亜さんのミ・アモーレも盛り上がります。天彩峰里さんもデュエットダンスその他で歌を披露します。そして何といっても留依蒔世さんです、圧倒的な歌唱です。銀橋渡りのミケランジェロも良かった、エトワールも留依さんが歌い上げます。劇場に響き渡る留依さんの声。長い長い万雷の拍手をうけました。留依さん、声よく通って豪快で面白くて歌上手、たくさんのファンから愛されていたことがよくわかります。院長も留依さん大好きです。退団されるのが実に惜しいです!

 芝居もショーも見どころが多い舞台でした。皆さま機会があればぜひ宙組をご観劇ください。(2022.8.31 院長 長くなってすみません)

 

(1)個人的にはHiGH&LOWの殴り合いシーンは舞台劇に馴染まないなと感じました。映画・アニメではズーム、スロー、CGを用いて戦闘シーンをフォーカスできますが、舞台だと小さく見えてしまいます。横幅が広い大劇場では尚更です。まだ剣の闘いなら大きく見せることもできましょうが、素手のケンカはどう工夫しても迫力不足に見えます。これは舞台という形式の限界なので仕方ないのでしょう。ロミジュリなどのように戦いを集団ダンスで表現してもいいんじゃないかと思いました。

(2)山王商店街の夕焼けのシーン、これはウルトラセブン第8話「狙われた街」(メトロン星人)を参考にしているに違いないと思います。

 

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2022年

8月

17日

残暑もエレキ「エレキの若大将」

 

 壁の飾りをかえました。

加山雄三「夜空の星」昭和40年、作詞:岩谷時子、作曲:弾厚作、演奏:寺内タケシとブルージーンズ

 お盆も過ぎたというのにまだまだ暑いです。夏の名残にまだエレキを聴いています。

加山雄三の映画「エレキの若大将」の主題曲です。

 この曲で勝ち抜きエレキ合戦を勝ちあがっていくんですよね。対抗バンドのジェリー藤尾の指示で青大将(田中邦衛)がギターアンプの電源をぬいて音が鳴らなくなり、でも加山さんはひるまず電源を入れなおし演奏を再開、エレキ合戦なのに歌い出したりして、結果見事優勝するのです(1)。

 レコード用の録音ではボーカルの音量が大きくてギターが目立たないのですが、耳を澄ませてバックのギターを聴いてください、寺内タケシさんのテクニックがスゴイんです。なお寺内さんは「蕎麦屋のタカシ」という役名で登場し、若大将の家で初めてエレキを教えてもらう、という設定なのですが、エレキを触って5分でめちゃくちゃ巧く弾けるようになります。まあ観ている客も「寺内さんだからいいか」と納得するわけです。

 映画のサントラ録音もカッコいいですので是非お聴きください。出だしはインストでトレモロ・グリッサンド(2)(=テケテケ)も入ってて、インストの方がギターサウンドをよく味わえます。

 さて当時はエレキは不良のものだったはずなのに、子供も観る映画(3)で若大将がエレキを弾きまくっていいのか?という疑問が浮かびます。しかしそれもこれも加山雄三さんがハンサムでクリーンで上品だから、何でもOKなのです。そして作曲が加山さん本人によるということも歌謡曲の歴史上重要です。つまりシンガーソングライターの嚆矢であるということです(4)。

 残暑が厳しいですが、まだ暑い時こそ名残のエレキ、若大将の名曲をぜひお聴きになってください。 (2022.8.17 院長) 

 

(1)演奏できなくなって歌でカバーして優勝、これは石原裕次郎「嵐を呼ぶ男」と展開が同じ。

(2)寺内タケシさんのテケテケは指板を押さえる指が人差し指と薬指2本使う独特のスタイルです。一音一音くっきり出ることが特徴です。

(3)なお「エレキの若大将」の併映は「怪獣大戦争」でした

(4)この時期くらいまではレコード会社専属作家制度が根強く残っていて、曲というものは作曲・作詞の先生に書いていただくものでした。作曲プロセスの固定化から新しいスタイルを作り難しかったと言います。自分で作曲して歌うなんてとんでもないことだったのです。加山雄三さんは弾厚作というペンネームを使っています。

 

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2022年

8月

03日

月組「グレートギャツビー」

壁の飾りをかえました

月組「グレートギャツビー」宝塚大劇場2022年7月22日~8月22日

 有名なスコット・フィッツジェラルド原作小説の舞台化です。

 トップ月城さんの説得力ある歌と芝居、何よりビジュアルが華麗です。ヒロインのデイジー海月さんが翻弄されていく姿も悲しく良い演技でした。そして今回私のいち推しはニック・キャラウェイ風間柚乃さんですね。優秀で実直で人のことを悪く思わず、友情に厚い、好青年を演じます、これが風間さんにピッタリなんですね。ストーリーを通してみれば陰の主人公であるように思います。専科、とは言っても元月組の輝月ゆうまさん演じる裏社会のボス、マイヤーが迫力満点です。闇酒場でギャツビー、ニックと話す場面、物凄い眼力なんです、ここはオペラグラスでしっかりご覧ください。踊りも切れがあります。

 さて宝塚は女性ファンが圧倒的に多いので、なかなか男役ファッションについて語られることは少ないと思います。今回は男性ファンの視点から男役の服装についてお話したいと思います。

 本作品はとにかく1920年代のアメリカン男性ファッションの展覧会で、かなり当時を再現していてお洒落だなあと感心します。そして人物の来歴や性格を反映するところもいいなあと思います。

 まずギャツビー(月城さん)、ポスターの白の三つ揃い、おそらくリゾート向け麻スーツでしょう、本当にカッコイイ。ベストはよりクラシックなウェストコート着用。とてもドレッシー!そしてシャツ襟に注目ください、ピンホールカラーといいます。ネクタイの裏側にピンを通して、ネクタイを前に起こし立体感を出すシャツで当時の流行です。ほかにもこれによく似たタブカラー(ネクタイの裏に左右の襟を繋ぐ紐がついている)を着用する登場人物が沢山います、注目してください。またコンビ(2色使い)の靴もお洒落です。なお本作品では男役はほとんど三つ揃いを着用していますが、現代のようにベストを着なくなったのは1940-50年代からです。それまではワイシャツの胸の部分を見せるのは下着が見えているくらいダラシナイと考えられていて、紳士はベストをつけるのがたしなみとされていました。

 ニック(風間さん)、カントリー調ジャケットに合わせるのは、ラウンドカラー(丸襟)のクレリックシャツ(襟と身が異なる色のシャツ、本作は襟が白、身がブルーの一シンプルなもの)これも1920-30年代の流行。別場面ではネイビーブレザー姿、これはアイビーリーグ名門Yale大学出身のニックらしい服装ですね。彼の真面目な性格を表しています。アイビーといえばブレザー!ニックのブレザーはダブルブレストに肩パッドの英国調(シングルでナチュラルショルダーが米国風)、胸に赤のエンブレム付、出身校の校章でしょうか(Yaleは青色だから違うのかな?)。そしてアイビーの定番ボタンダウンシャツ。パンツはグレンチェック柄、これは当時英国皇太子であったウィンザー公お好みの柄。1920年代に皇太子が訪米し流行しました。ということはニックは結構英国への憧れがあるのかなと思いました。ギャツビーがオックスフォード出身ときいたときも超尊敬の眼差しでしたからね。そうそう、左腕にトノー型(樽型)腕時計!これは最新ファッションアイテムだったのです。というのは当時は懐中時計がフォーマルであり腕時計はカジュアルな新型アクセサリーだったのです。特に四角や樽型が好まれました。ニックは生真面目ながらカジュアルでお洒落なものを取り入れる若い感性の持ち主なんでしょうね。

 トム(鳳月さん)は上流階級の金持ちファッションです、英国風スーツ、ポロ競技服といい、成金風ではなく上品です。アメリカには貴族制度はありませんが、貴族並みの名家ということがうかがえます。

 メイヤー(輝月さん)典型的ギャングファッションです、幅太のストライプスーツで大柄な輝月さんによく合いますね。

 ケンタッキー州ルイヴィルの場面、デイジーの父アンソニー(春海さん)ふくめこの町の男性の洋装はスーツが出現する前のフロックコートで古い様式です。女性陣の服もロングで旧式です。地方ではまだ旧式の服装が一般的であったことを物語っています。対してニューヨークの服装は最先端なのです。

 ギャツビー家パーティーでの男性礼装もよくご覧ください、1回目のパーティーは黒燕尾でホワイトタイのクラシックな礼装、2回目のパーティー場面はタキシードつまり準礼装です、蝶タイはブラック、剣襟ありショールカラーあり、シャツはイカ胸やひだ胸もあり、ウェストコートやカマーバンドとバリエーション豊かなタキシード姿。元々タキシードは燕尾服のテールを切り取ったのが始まりで、1880年代に出現し米国で広まりました。タキシードはアメリカらしい新しい時代のパーティー衣装なのです。

 グレートギャツビー、芝居も歌も大変充実、機会ががありましたら是非ご覧ください。そして合間には古き良き時代の男性ファッションも楽しんでください。

(2022.8.3 院長)

 

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2022年

7月

20日

メロディーの力「岬めぐり」

壁の飾りをかえました。「岬めぐり」山本コウタローとウィークエンド昭和49年 作詞:山上路夫、作曲:山本厚太郎

 「走れコウタローと岬めぐりのたった2曲で38年!」山本さんの定番自虐ネタです。これでまず笑いをつかんでおられました(1)。

 昭和45年一橋大学在学中にソルティー・シュガー「走れコウタロー」が大ヒットオリコン1位獲得。ソルティー・シュガーは1年で解散。大学を卒業し、昭和49年に山本コウタローとウィークエンドを結成しヒットしたのが「岬めぐり」です。

 「たった2曲でウン十年」というのはスゴイことで、楽曲の力がそれだけ強いのだと思います。

 岬めぐりは山上路夫が作詞し、当初「かぐや姫」の南こうせつに曲を依頼したところマイナーで悲しい曲調ができました。「女にフラれてジメジメしているというのはコウタローのイメージに合わない」と周囲がいうので結局本人が作曲することになったそうです。20分くらいであの曲ができたというのです。詞の内容は物悲しいですが、曲は爽やかで朴訥としたイメージです。

 ネットなどで検索すると”素直な”コード進行と言われていますが、実際にコード譜をみながら曲を聴いてみると、7th音やちょっとした外し音を効果的に使いメロディーを印象付けているところがありますし、終止せず無限ループに入りやすいコード構成も取り入れています、これがあると何度も聴きたくなる、つまり耳から離れない曲になるのです。またフォークギターが16ビートともとれる前のめりリズムでスピードがあります。その辺がこの曲の持つチカラの源なのではないかと思っています。

 当時院長は小学低学年で「岬めぐり」を聴く年代ではありませんでした(2)。山本さんをよく見たのは後年「笑っていいとも」にレギュラー出演されていた頃です。いつもヘラヘラ笑っている面白いタレントさん、いうイメージでした。その後は「午後は○○思いっきりテレビ」の司会者、「渡る世間は鬼ばかり」に俳優で出演、大学教授、社会文化活動、と幅広く活躍されました。

 皆様機会があればぜひ「岬めぐり」の曲の力をご鑑賞ください。そしていつも楽しそうに笑っていた山本コウタローさんを思い出してください(3)。

 2022.7.20(院長)

 

(1)2008/10/03四国新聞 2008/10/03文化放送

(2)なぜか「走れコウタロー」はみんな知っていました。競馬実況の早口アナウンスを練習しました。

(3)山本コウタローさんは2022.7.4にお亡くなりになられたと7.15に発表されました。山本さんのご冥福をお祈りいたします。

 

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2022年

7月

06日

夏だ!エレキだ!ベンチャーズ「ダイアモンドヘッド」

壁の飾りをかえました。ベンチャーズ「ダイアモンド・ヘッド」1964年

 暑い!それにしても毎日暑すぎます。こんなときはエレキ・サーフィン音楽に限ります。ベンチャーズのレコードを聴いて涼をとっています(1)。

 1曲目「ダイアモンド・ヘッド」、針を落とした瞬間イントロからモズライト・ギターの低音弦がリヴァーブをピュンピュン鳴らして迫ってきます。そしてアタックの強さと粘り気ある弦音がメロディ開始4小節でぐっと惹きつけます。真空管アンプの自然な歪み音、もう最高にカッコイイですね。モズライトギターのサウンドは太くクリーンな音、そして粘り気が特徴なのです。その秘密の一つとして、ピックアップコイルの巻き数が多く、出力が大きいからだそうです。フェンダーのキラキラ音と対照的です。 

 ベンチャーズは1965年来日の際に人気が爆発し、日本中の中高生”男子”がエレキ(エレキギター)に興味をもつ社会現象まで引き起こしました。翌66年にビートルズが来日し、その時は主に”女子”がビートルズに熱狂したと言います。男子はベンチャーズのギターサウンドに惹かれ、女子は歌とコーラスのあるビートルズ、と男女差があるのが興味深いです(2)。確かにベンチャーズの外見は女子向きじゃないですね、髪型は旧来のリーゼント、体形はマッチョ。サウンドはギターテクニック主体でソリッドギター(3)。ビートルズは長髪オカッパ、スリムなモッズスーツ、初期作品はラブソング率高い、コーラスワーク中心、ギターサウンドはセミアコやアコースティックで和音とアレンジ中心、で女子向き。と60年代はこういうことが起こっていたわけです。

 何十年も経って顧みるとベンチャーズはテクニック、ギターサウンド、が突出していて、加えて日本的音階(ペンタトニック)、既存曲のアレンジが巧妙で一見簡単そう=覚えやすい=わかりやすい、という点が日本で受けた理由だと思います。まあ実は簡単そうなメロディを何コーラスも聴かせ続けるノーキー・エドワーズの確かなテクニックがあってこそなんですけどね(4)。

 このLPは1983年発売のベスト盤です(5)。ほかにも「10番街の殺人」「パイプライン」「Walk don't run 64」など名曲がたくさん入っています。

 皆様、機会がありましたらベンチャーズをお聴きになって暑さを吹き飛ばしてください。またくれぐれも御身体には十分お気をつけください。 (2022.7.6院長)

 

(1)夏になるとベンチャーズが来日し新聞・雑誌の広告で「夏だ!エレキだ!ベンチャーズ!」を見かけたものです。夏の風物詩です、季語に入れてほしいところです。

(2)この時代のベンチャーズコンサートは見事に男の客ばかりだったそうです。

(3)これ、80年代にもよく似た現象があって、この時代男子にはハードロック、ヘビメタのギターが流行していました。昔も今も男子はギターテクニックに憧れるものなのか?2020年代はどうなのでしょうか?

(4)試しに自分で弾くと楽譜通りに弾けても全く味気ない音しか出せないのです。

(5)64年発売のオリジナル盤"Surfin'"とは違うものです。ベンチャーズのアルバムはサーフィンが名前に入ってるのが数種類あって混乱します。 

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2022年

6月

22日

花組「巡礼の年~リスト・フェレンツ/Fashionable Empire」

壁の飾りをかえました。 (2022.7.4追記あり)

花組「巡礼の年~リスト・フェレンツ/Fashionable Empire」宝塚大劇場2022年6月4日〜7月11日

 ピアニスト・作曲家フランツ・リストの物語、舞台は1830-40年代頃のパリです。

主演トップ柚香光さん本当に美しい!サロンで大モテだった雰囲気が滲み出ています。そして役作りでは苦悩する心情を表現する芝居が深い。ヒロインのダグー婦人役 星風まどかさんも美しい。女性の生き方というテーマを演じます。トップ経験も長く重い芝居が似合うようになりました。水美舞斗さんのショパン、永久輝さんのジョルジュサンド、帆純まひろさんタールベルク、と実在の人物も登場し見所沢山です。

 前半は歌で話が進行するミュージカル・スタイル。リストはクラシック・ピアニストですが、楽曲はジャズ、ロック、ラップまで幅広く使われていてロックオペラのような感じです。テンポよく進行し、だんだんと芝居の緊張感が高まっていきます。後半は精神世界的な展開になって少しわかりにくかったです。何回か観るとわかるのかなあ。

 後半のショーはFashionable Empire、水美さんのエネルギッシュなダンスで幕開けです。水美さんのダンスは速すぎて時々見えないときがあります。続いてラビリンスの場面、聖乃さんが辿り着くラビリンスには、何人も女性をはべらせた柚香さん、そこに水美さんが割って入り、女性を取り合ってダンスで対決という場面。歌は組長美風まいらさん・音くり寿さんの娘歌手に和海しょうさん・南音あきらさんの男役歌ウマ、聴きごたえあります。

 永久輝さん”Fly me to the Moon”の場面では、柚香・星風vs水美・音の高速回転リフトも出ます。今回退団される、飛龍さん、若草さん、音さん、芹尚さん4名の場面もありました。個人的にはもっと餞別場面あってもよかったかな。

 全体的には「ダンスの花組」「スターの花組」が前面に出た華やかなショーだと感じました。

 そして今回、聖乃あすかさんが最近2作品で随分と男らしい硬派な路線になってきたなあと感じました。これまで線の細い王子様、貴公子、アイドル的なイメージと思っていましたが、前作「冬霞」でアナーキスト役、今回の芝居では新聞社長からの革命協力者、化粧は眉を太くしてハードなイメージです。ショーでは水美さんと同系のマッチョなイメージ。柚香・永久輝エレガント優美チームvs水美・聖乃マッチョなアスリートチームの対比も楽しみです。

 皆様機会がありましたらぜひ花組の素晴らしい舞台をお楽しみください。(院長2022.6.22)

 宝塚はこの時代のヨーロッパを題材にした作品が多いです。今回はサロンで活躍する芸術家とその周辺の人物に焦点を当て興味深かったです。いつもは観劇後ヨーロッパ史の本で当時の政治の変化や人物を調べたりしますが、今回は音楽史の本を読んだりして勉強になりました。

 上田 泰史「パリのサロンと音楽家たち 19世紀の社交界への誘い」カワイ出版2018年

 

カテゴリ 宝塚歌劇  

 

(追記) また観てきました  音楽面で面白いと思ったことです

#お芝居「巡礼の年 リスト・フェレンツ」

(1)オープニング、サロンでリストが演奏する場面、歌はリズム&ブルースかつピアノはロックです、猛烈スピードのピアノ演奏は往年のパンクバンド「ストラングラーズ」を彷彿させます。

(2)ピアノに「C.BECHSTEIN」と刻まれています。ドイツの高級ピアノメーカー・ベヒシュタインです。創業年が1853年らしいのでリストがサロン文化で活躍した1830年代と時代がずれていますね。リストは1860年からベヒシュタインを使っているそうです。なお、ショパンはフランスの「プレイエル」を使っていたそうです。

(3)革命家のラップ・ナンバー場面の次、リストが各国貴族を前にして歌う曲が「ホテルカリフォルニア」に聞こえてしまう件。

#ショー「Fashionable Empire」

(4)「サニー Sunny」聖乃さん率いるダンサーが踊りまくります。オリジナルはBobby Hebb1966年全米で2位。皆様おなじみのオールディーズ。数え切れんほどカバーされています。今回の舞台曲は1976年ボニー・Mによるディスコ・ヴァージョンですね、カッコいい!EP買いたいわ。

(5)群舞は往年の海外TVドラマ「ピーター・ガン」のテーマ?っぽい曲です。限りなく似ているがギリギリセーフ(笑)。音・ダンスともにカッコイイですね!

#全体を通じて

(6)全体を通じて色々な曲が次々に展開して耳を楽しませてくれます。いうならば熟練のDJ(ディスクジョッキー)音楽番組を聴いているかのような、宝塚歌劇音楽の大きな魅力です。

2022/06/22

  

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2022年

6月

08日

受験数学の話2「対称式の性質」

ひさしぶりに受験数学の話です。対称式の性質についての話です。ブログでは数式を書けなかったので画像貼り付けになっています。 興味を持っていただけましたら幸いです。式が長いのでスマホよりパソコンの方が見やすいと思います。

 

カテゴリ 受験

 今回の公式はべき乗和の対称式、それも文字数が多く(3文字や4文字)次数が高い問題で役に立ちそうです。もし入試などで使うなら公式を書いて「左辺を展開すると導ける」と一言書いておけばOK(減点されない)だとおもいます。 (院長) 2022.6.8 

カテゴリ 受験

 

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受験数学の話「対称式の性質」
ブログ 対称式の性質
対称式の話2022.6.8.pdf
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2022年

5月

25日

フォークルの「悲しくてやりきれない」

壁の飾りをかえました。

「悲しくてやりきれない」ザ・フォーク・クルセダーズ昭和43年

作詞:サトウハチロー、作曲:加藤和彦、編曲 ありたあきら(小杉仁三)

 2回連続加藤和彦さんです。ザ・フォーク・クルセダーズは「帰ってきたヨッパライ」で大ブレイクし、続く2枚目の予定であった「イムジン河」が発売直前で販売自粛になってしまいました。代わりの曲を今すぐ作ってちょうだい、3時間で、といわれ、ニッポン放送ビル内にある音楽出版会社の社長室に閉じ込められた。どうしようかと困っているうちに、「イムジン河」の記譜を逆さまからたどってみると、新しい曲のモチーフが浮かんできた、そこから30分でメロディーが書けた、という有名な話があります(1)。

 曲ができるとすぐに社長が作詞家のサトウハチロー先生(2)の家に連れて行きます。先生と曲の打ち合わせはなく、世間話だけで帰ってきました。1週間後に先生の詞が届きました。「悲しくてやりきれない」こんな詞でいいんだろうか?と加藤さんは思ったそうです。でも、歌ってみるとすごくはまっていた、すべての語句がピタッと合っていた、何も打ち合わせしていないのに、と語っておられます。

 詞は静かで美しい風景と、その中でやりどころのない心情を描いている、それだけなんですねシンプル。実はサトウ先生は実弟を広島の原爆でなくされています。長崎原爆を題材にした曲「長崎の鐘」の歌詞で「こよなく晴れた青空を悲しとおもう切なさよ」と書いておられます。よく似た情景です。どうしようもないときは美しい景色はむしろ虚しいということでしょうか(3)。対して加藤さんの曲は決して暗いメロディーではなく、メジャーコードの明るさがあるのです。やりどころのない悲しさを表す詞に対して未来への期待を思わせるメロディー、聴いてて「あ、悲しすぎるけど何とかなるんじゃね」という気持ちになる。この組み合わせが普遍のメッセージを伝える曲になったのでしょう。 

 皆様機会がありましたらぜひこの名曲を再びお聴きください。2022/05/25(院長)

 

(1)NHK BSフォーク大全集5(1996年)などインタビュー動画より

(2)「リンゴの唄」を書かれた大作詞家です。戦前には童謡「ちいさい秋みつけた」 「かわいいかくれんぼ」 「うれしいひなまつり」など書いています。当時サトウ先生64歳、加藤和彦さん20歳、面白い若者が来たなと思われたのでしょうか。

(3)心理臨床の先生がこんなことを書かれていました。「心療内科の医療心理士として,うつの患者さんたちが窓の外の何気ない景色を見ても涙がこぼれると話すのを聴いていて,あるとき『悲しくてやりきれない』の歌詞を思い出した.そうか,こういうことだったのか,そんな気持ちが表現されていたのかと」、「<空のかがやき>や<白い雲>を見て,なぜそんなに悲しくなってしまうのか,爽やかな空を見たら少しは気分も晴れそうなものではないか?」

 島田凉子(2016) 巻頭言 『悲しくてやりきれない』と心理臨床 心身医学 Vol.56, 9, 884-5.

 

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2022年

5月

11日

あの素晴しい愛をもう一度

壁の飾りをかえました。

「あの素晴しい愛をもう一度」昭和46年作詞:北山修 作曲:加藤和彦

 院長が中学高校のときにはこの曲から既に10年近くたっていました。音楽教科書に採用だし、しかも合唱コンクール課題曲という時点でダサい(1)と思っていましたから、きちんと聴いておりませんでした。大人になって改めて聴くと本当にいい曲なんですね。北山修先生そして加藤和彦さん(2)ごめんなさい。

 しかしよくよく聴くと結構悲しい内容の歌詞です。こんな悲しい歌がなぜ教科書に取り上げられ多くの人が合唱したかったのか、歌詞の意味が分かる大人になってからの不思議です。

 歌詞の一部に「あの時同じ花を見て 美しいと言った二人の 心と心が今はもう通わない あの素晴しい愛をもう一度」とあります。調べてみると北山修さんは歌詞に込めた思いを次のように語っておられます。

 

 ”この詩は恋愛とか青春とかを描いたというよりは、日本が大事にしてきた横のつながりの文化を描いた歌です。連帯感とも言い換えられるかな”

 ”この国の人たちは、同じものを肩を並べて一緒に眺める横の愛を好みます。お花見や紅葉狩り、花火もそう。同じ景色を見て、みんなで『きれいだね』って確かめるのが好きなんですよね” (2021.2.10 中日新聞より)

 

 ”「愛」には、「あの時同じ花を見て 美しいと言った二人の」という歌詞がかかってきます。これは、日本的な「横並びの愛」なんです。”

 ”たとえば日本の絵画では、母子が肩を並べて花を見る構図が多い。小津安二郎の映画『東京物語』も、最後は原節子と笠智衆が横並びで海を眺めるシーンで終わります。”

 ”お互いに見つめ合って、お前のことが好きだよ、と言う愛とはちょっと違う。横に並んだ関係の中で生まれる、日本的な愛を詞にしたのです。” (2020.2.10週刊現代より)

 

 引用ばかりですみません。実に良い言葉だなあと感銘を受けたので、まとめずそのまま転載させていただきました。なお院長はゴリゴリ昭和日本のオヤジですからこの話も歌も本当に心に沁み入ります。

 悲しいストーリーの歌詞に対し、楽曲はフォークの3フィンガーギターが淡々とメロディーを刻みます。こんな悲しい思いなのに何もなかったかのように日常は過ぎていく(3) という風情でますます悲しくなってしまいます。

 皆様機会がありましたらぜひこの名曲を味わってください。2022/05/11(院長)

 

(1)当時関西には「ダサい」という言葉はありませんでした。標準語の「カッコわるい」または京都弁から転用で「モサい」と言ってたような気がします。

(2)北山修さんは当時京都府立医科大の学生、卒後精神科医として活躍、九州大学の教授を務められました。加藤和彦さんはアーティスト、作曲家、プロデューサーとして活躍されましたが2009年に早世されました。

(3)このように感想を書いていたら本曲が映画「パッチギ」のエンディングでまさにその通りの使われ方をしていました!「パッチギ」では加藤和彦さんが音楽監修をされていました。

 

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2022年

4月

27日

宝塚星組「めぐり会いは再び/Gran Cantante!!」

壁の飾りをかえました。

宝塚星組「めぐり会いは再び/Gran Cantante!!」宝塚大劇場2022年4月23日~5月30日

 幸せいっぱいになる喜劇であります。1作目が2011年、2作目が2012年に上演され、今回はさらに続編の3作目です。前作を知っているとより楽しめるポイントが随所にあるらしいので、ぜひ以前の作品も観てみたいと思います。初見でも十分楽しい劇でした。また宝塚オリジナルの作品なので多くのジェンヌさんたちに出番があって良いなあと思いました(1)

 このお話メインテーマは主人公ルーチェ君と王女アンジェリークの恋物語ですが、隠れテーマがモラトリアム若者の成長物語なんじゃないかと思います。レグルス探偵事務所にたむろする大学の元同級生たち(主人公含む)はモラトリアム人生を悩みつつ楽しんでいます。物語が進むにつれて各々自らの道を見つけ大人に成長するのです(2)。

 後半のショーはGran Cantante!! スペイン語で「素晴らしい歌い手」を意味します。礼真琴さんにぴったりです。スペインを舞台に情熱的なショーです。カッコイイです。また専科から名歌手の美穂圭子さんも加わり、歌がハイレベル。構成も見せ方も宝塚歌劇の王道ですね。そして藤井大介先生演出での特徴、男役の女装もあってこれも魅せどころでした!

 主演の礼真琴さんはいつもながらに歌が素晴らしい!歌手のコンサートを聴きに来てるようなもんですよ。芝居では前作柳生十兵衛の重い役柄ではなく、今回はライトでちょっとヘタレな人物像。こういうのも似合いますね。

 ヒロイン舞空瞳さんもかわいいし踊りも上手いしで素晴らしいですね。マラゲーニャの曲デュエットダンス決めポーズはキレキレでした。

 2番手瀬央ゆりあさん、芝居では心優しい友人役、よく合っています。そしてショーでの見せ場は美穂圭子さんとの堂々たる2人歌唱でした。

 綺城ひか理さんは芝居では悪だくみ宰相オンブルを演じます。悪さ加減が堂に入っていますね。ショーでも演出の藤井大介先生が「ゴージャスさ、スケールの大きさを持ったスターで、内面からも大きなオーラが出ていて頼もしい」と評されていて、綺城さんの貫禄がよく出ているなと感じました

 そして今回天華えまさんがいい味出しておられるなあと思います。舞台作家をめざすセシル役、メガネの似合う好青年です。ショーでも自然に眼が行ってしまいます、さすがスター天華さん!

 若手も活躍していました。双子の子役カストル:稀惺かずとクンと、ポルックス:詩ちづるちゃん(ともに105期4年目)が目立っていました。これからの活躍が楽しみです。

 皆様機会がありましたらぜひ星組の素晴らしい舞台をご覧ください。

2022/04/27(院長)

 

(1)外国ミュージカルや他に原作がある作品だと出演人数が少なく、下級生の出番が少ないことがあります。

(2)院長はモラトリアムが相当に長かったので何だか昔のことを思い出しました。

 

カテゴリ 宝塚歌劇 

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2022年

4月

06日

津軽三味線ロック「帰ってこいよ」

 壁の飾りをかえました。松村和子「帰ってこいよ」昭和55年作詞:平山忠夫、作曲:一代のぼる、編曲:斉藤恒夫

 当時は、演歌だし三味線だし歌手はアイドルではないし、ほとんど興味ありませんでした。大人になって聴くとすごく魅力あふれる曲なのですね。まず松村和子さんのボーカルです、伸びやかな声、ものすごい歌唱力ですね。概して民謡出身の方の歌は超ウマです。そして楽曲は津軽三味線がロックに乗っかっているところがいい。津軽三味線の音色はエレキギターのソロ演奏に通じるものがありますから合わないわけがありません。またリズムはややファンク調になる所もあったりして。Bメロのベースライン、3コーラス目のハイハットなんか何度も聴きなおしてしまいます。こういうのが総体となり有無を言わせぬ迫力を醸し出すのです。

 さて松村さんは当時17歳、すでに民謡歌手として活動していたところビクターからスカウトされたと言います。実は元々三味線を弾けなかったそうで、デビュー前にこの曲だけ弾けるように猛特訓したそうです。知らなかった! 

 子供や若者視点からすると、1960年代→80年代日本の音楽シーンの流れは、GS→フォーク→第一期アイドル時代→ニューミュージック→80年代アイドル全盛時代、と言えましょう。昭和55年はニューミュージックは下火になりアイドルが一気に開花した年です(1)。しかし当時をよく思い出すと、昭和55年の前後はわりと演歌が根強く流行っていました(2)。その流れで新人演歌歌手をデビューさせた。異色のメロディーと歌声は国民の心を掴み大ヒットにつながったというわけです。本曲は68万枚売れ、昭和55年レコード大賞新人賞受賞、55年紅白歌合戦に出場しています。

 ともあれ「帰ってこいよ」は演歌に分類されますが実質はロック、つくづくカッコイイ名曲だと思います。

 色々不安ですが穏やかな日々と人心が帰ってきてほしいものです。皆様ひさしぶりにぜひこの名曲をお聴きください。2022/04/06(院長)

 

(1)昭和55年デビュー:松田聖子、河合奈保子、岩崎良美、柏原芳恵、三原順子、近藤真彦、田原俊彦、

(2)昭和52年千昌夫「北国の春」53年渥美二郎「夢追い酒」北島三郎「与作」54年小林幸子「おもいで酒」 敏いとうとハッピー&ブルー「よせばいいのに」55年都はるみ「大阪しぐれ」山本譲二「みちのくひとり旅」など

 

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2022年

3月

23日

宝塚雪組「夢介千両みやげ/Sensational !」

2回連続宝塚で恐縮です。

「夢介千両みやげ/Sensational!」宝塚大劇場2022.3.19~4.18

 山手樹一郎さんの小説の舞台化で原作は昭和23年だそうです。物語は終止楽しくそしてハッピーエンド、桜の季節にぴったりの劇です。和物ですが楽曲にジャズを取り入れたり、ミラーボールを使ったりと華やかな演出の劇です。

 トップ彩風咲奈さん演じる夢介は底抜けのお人よしでおせっかいな青年、力は強いが暴力も争いごとも嫌い。夢介の魅力で周囲の者たちを更生したり幸せにします。これまで彩風さんは重厚な役回りが多く、それが似合う人だと思っていました。今回の役は正反対で愚鈍なくらいの朴訥とした人物像です。見た目のカッコよさではなく人間的な懐の大きさが魅力の役作りが巧いなあと思います。

 娘トップ朝月希和さんは美女スリ・お銀の役。夢介にほれ込んで押しかけ女房になります。チャキチャキして、でもかわいいところがある娘像がいいですね。

 朝美絢さんは伊勢屋の道楽息子、総太郎を演じます。通ぶって女にもてると思いこんでいます。テーマ曲の歌詞「なんせこの顔この器量もててもててしょうがない」これは美形の朝美さんならでは。こんなに美形なのに大真面目に失敗します、なので総太郎がやらかすたびに客席から笑いがこぼれます。

 宙組からやってきた和希そらさんもいい味です。先日宙組でイケメンおじさんを演じていたのに、今回は17歳のスリ!色んな役ができるマルチプレイヤー。後半のショーでも美声の歌そして踊りもパワフル。雪組和希さんの活躍これから楽しみです。

 大人気の若手、縣千さんは役名「金の字」、遊び人の金さん、つまり遠山の金さんですね。縣さん大柄でダンスがキレキレでカッコイイんですよ。縣さんこれから本当に楽しみです。

 後半のショーSensational !勢いのある華やかなショーでした。キャラバン、黒い瞳、シバの女王など有名曲をふくめジャズ、ロック、フュージョン、ラテンのカッコいい楽曲に雪組生のダンスがめまぐるしく繰り広げられるのです。

 今回で退団される綾凰華さん、ショーの中詰めラスト、銀橋ソロ歌唱は自身の思い出を込めた歌詞、そしてフィナーレ彩風さんと2人で銀橋に残って歌うシーンあり感動的ですね。院長が好きなのは黒燕尾シーンです、若手も大勢出演しての壮観な群舞です。

 暗い話題が多い昨今ですが、明るい気持ちで元気になる芝居にショーでした。皆様、機会がありましたらぜひ雪組の舞台をごらんください。2022/03/23(院長)

 

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2022年

3月

09日

宝塚宙組「Never Say Goodbye」

壁の飾りをかえました。

宝塚宙組 「Never Say Goodbye」宝塚大劇場2022年2月5日~3月14日

2/5から休演がつづき、2/28にようやく幕が開いた宙組公演です。

2006年宙組公演の再演。1930年代スペイン内戦を舞台にしたミュージカルです。

物語は重いです。コーラスの宙組といわれるだけあり各場面で群集劇とコーラスに感動です。今の宙組は本当に役者と歌手が充実しているなあと感じます。

 主役ジョルジュ役は真風涼帆さん。院長の敬愛する堂々たる男役トップさんです。立っているだけで存在感があります。そしてスーツ姿や仕草もカッコイイんですよね。相手役の潤花さんは、大人の女性役がピタリはまっています。今回の劇作家キャサリン役も自立した女性でまさに適役です。真風さんとの並びがよく合うなあと感じます。組替えして宙組トップになられ大輪の花という印象です。

 芹香斗亜さん、闘牛士が祖国のために闘士になるという情熱の男の役です。ベテラン2番手の渋さで、歌唱力、演技ともにさらに深い!芹香さんという芸を観るだけでも大きな価値があります。桜木みなとさんは久しぶりの悪役です、歌唱も悪役芝居も磨きがかかっています。

 留依蒔世さんが今回も大活躍です。普段は男役ですが今回も女役。女性闘士ラ・パッショナリアを演じます。留依さんは豊かな声量で歌が超絶ウマいことで定評があります。ホールに響き渡る迫力のソロ歌唱です。銃を持ってのダンスもキレキレです。なおフィナーレでも娘役で登場し芹香さんと組んで濃厚な色気あふれるダンスを披露します。留依さんは日頃から色気について研究されているそうなので、ここも見どころです。

 そして若翔りつさんも歌で聴かせてくれます。若翔さんは今回は市長役を演じます。このところ連続でオジサン役が本当に上手です。以前にも書きましたが若翔さんは昔のビデオなどで男役の研究に余念がないそうです。劇では若翔さんから留依さんの歌い継ぎで耳福です。

 瀬戸花まりさんは歌・芝居ともに上手な娘役さん、占い師アニータ役です。瀬戸花さんが美声で歌を奏でながら占う場面、皆が固唾をのんで見守る、緊張感と神秘的な空気に満ちた良いシーンだと思います。これからも宙組の歌唱を引っ張ってくださると思っていましたが今回で退団ということで本当に惜しいです。

 フィナーレも迫力十分です。ムレータ(闘牛士が使うあの布です)を用いた群舞が圧巻です!赤と黒のコントラストが本当に美しい。そしてデュエットダンスで真風・潤コンビのリフトが見られます。最後に潤花さんが銀橋で高難度のポーズを決める、華麗です!

 今回は宝塚大劇場公演がたった2週間になり残念ですが、東京公演もぜひ頑張っていただきたいです。皆様ぜひライブ配信など利用しこの素晴らしい舞台をご覧ください。  2022/03/09(院長)

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2022年

2月

16日

スイングのその後「妖怪人間ベム」

壁の飾りをかえました。

「妖怪人間ベム」昭和43年、歌:ハニーナイツ、作詞:第一企画㈱、作曲:田中正史

 日本の戦後は服部ブギから始まり進駐軍クラブでダンスミュージックとしてスイングが流行しました。そのうち米国でスイングからビバップ・クールジャズなどモダンジャズに進化し、日本のジャズ界もそれに追随しました。ではその後スイングは消えたのかというとそうではないと思います。この曲は一つの答えと言えるでしょう。

 スイングはビッグバンド演奏という形態をとり広く日本社会に根付いていったのだと考えます。ビッグバンドは純粋なスイングジャズもときに演奏しますが、普段はTV歌番組の生伴奏、劇伴、あるいはナイトクラブの伴奏などとして定着したのです。ラテンや歌謡曲も演奏するが根本のところにスイングジャズが残るという風なのだと思います。

「妖怪人間ベム」はスイングジャズの魅力が詰まった名曲です。管楽器のアンサンブルに勢いがあります。そしてベースがカッコいいんです!ただの4分音符でさえ完全にスイングしてます。この硬質な音は江藤勲さんではないかと院長は想像しています。

 歌は定評のコーラスグループ、ハニーナイツ(1)が担当、綺麗なハーモニーです。スイング全盛時代のジャズコーラスグループ、The Pied Pipers, Andrews SistersやMills Brothersなんかを思い出します。

 子供向けアニメ主題歌として受け入れられていた、ということはスイングという形式の音楽が十分日本社会に定着していたと言えましょう。

 アニメの印象が強烈なのでこの曲はこれまでなかなかポピュラー音楽として聴いてもらえていなかったと思います(2)。日本に根付いたスイング、ぜひもう一度お聴きください。なおテレビ版よりもレコードのフルコーラス版をお勧めします。2022/2/16(院長)

 

(1)ハニーナイツは「ふりむかないで」(エメロンシャンプーのCM)、サスケ、ミラーマン、ウルトラマンAなど数々歌っています。美しいハーモニー。

(2)後年、東京スカパラダイスオーケストラが演奏しています。昔ライブで観たことがあります。スカパラの妖怪人間ベムめちゃくちゃカッコイイです、動画など検索してぜひご覧ください。

 

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2022年

2月

02日

スイングからモダンジャズへ「嵐を呼ぶ男」

 壁の飾りをかえました。石原裕次郎「嵐を呼ぶ男」昭和32年、作詞:井上梅次 作曲:大森盛太郎 編曲:河辺公一

 日活映画「嵐を呼ぶ男」の主題歌です。 昭和32年末に公開され昭和33年の正月映画として大ヒットしました。当時としても名作というより娯楽作品という位置づけであったようです。

 裕次郎と敵役のドラム対決が映画のヤマ場です。敵の策略で手にケガを負った石原が本番中ついにドラムを叩けなくなるが、突然マイクスタンド(1)を掴んで歌い出す、観客から拍手喝采、という無茶すぎる展開です。歌詞もセリフも相当にクサいです。歌唱もお世辞にも上手いと言えません。

 ところがこの曲、伴奏がしっかりしているうえに、間奏がメチャクチャカッコイイんです!1コーラス後はサックス、2コーラス後はピアノの即興演奏、そう間奏だけモダンジャズなんですね。間奏だけ浮いている気すらします。「嵐を呼ぶ男」は、わかりやすい歌謡メロディーと、先端のモダンジャズを混ぜ合わせたサウンドなのです(3)。

 米国では1945年頃から、日本では1950年頃からジャズの先端はスイングからモダンジャズへの流れになりました。スイング=「大編成、楽譜演奏中心、ダンスミュージック、大衆的」、モダンジャズ=「小編成、即興演奏重視、じっくり小会場で聴く、マニア向け芸術的」という対比でしょうか(4)。前回の戦後の服部スイングと本作を聴き比べると、スイングからモダンジャズへの時代の流れを感じ取れます。

 流行歌はメロディー中心の方が受けますから、即興演奏を旨とし和声から外れた音を多用するモダンジャズとは相容れません。しかしジャズドラマーの物語なんだからジャズらしい部分も入れたい、そこで間奏にモダンジャズを入れたのだろうと思います。劇伴の名作モダンジャズはたくさんありますが、歌付き流行歌でこんな風にモダンジャズを取り入れて成功したものは他に思い浮かびません。こんなアンバランスを味わうのも歌謡曲の醍醐味です。

 皆様、裕次郎さんの「嵐を呼ぶ男」改めてお聴きになってぜひ当時のジャズメン達の熱気あふれるサウンドをお楽しみください。2022/02/02(院長)

 

(1)画像から見るにAIWA(アイワ)製リボンマイクロフォンだと思います。リボンマイクは繊細で衝撃に弱いのでこの映画みたいに振り回してはいけません。

(2)レコードには演奏「白木秀雄とオールスターズ」とあります。石原のドラムは白木秀雄、敵役・笈田敏夫のドラムは猪俣猛が叩いています。ほかに松本英彦(テナー・サックス)、河辺公一(トロンボーン)、山崎唯(ピアノ)が参加したと言われています。

(3)マイク・モラスキー「戦後日本のジャズ文化」2017年岩波現代文庫(初出2005年青土社)より"ジャズは基本的には歌手のない器楽演奏として発展してきた。ところが、歌手がいることによって、それほどジャズ好きでない聴衆の間でもジャズの人気が高まる"

(4)こんな解説をつけていますが、難解なので院長はモダンジャズをあまり聴いていません。色々間違ってたらすみませんです。

 

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2022年

1月

19日

スイングジャズと歌謡曲 銀座カンカン娘

SPレコードは壁に飾ってもどうも写真映えしないので今回はレコードの写真と参考図書(1)だけです。

高峰秀子「銀座カンカン娘」昭和24年 作詞:佐伯孝夫、作曲:服部良一

 もうね服部先生は日本の流行歌にジャズを取り入れたJポップの先駆者です。戦後の服部ジャズといえば「東京ブギウギ」をはじめとした笠置シヅ子作品が有名です。笠置さんは歌のキャラクターが濃すぎパワフルすぎて(大阪人です)、意外とスイングジャズのド真ん中ではないものが多いと感じます(2)。

 院長は笠置シリーズも好きですが、昭和24年「銀座カンカン娘」の王道スイング・サウンドが好きですね。(王道と言いながら弦楽器も入ってるけど) 平和が訪れて前向きで明るい感じの楽曲です。

ビッグバンドをウマく鳴らせているんです、バックの和音は7th、歌もバックもブルーノート(3)を効かせて、フルスイングしてます。とくに間奏なんか10秒くらいしかないんですけどカッコいいんですよ。

 この曲は新東宝の映画「銀座カンカン娘」の主題歌です。映画を見ますと高峰秀子さん(デコちゃん)が本当に可愛いんですよね。笠置シヅ子さんや灰田勝彦さん(4)、古今亭志ん生さんも共演していて豪華です。そして高峰さんの歌唱ですが歌い上げる、というより語りかけられているように聴こえるんですよね。他の大物歌手によるカバー曲を聴いてもなぜかこうはいかないのです。やはり高峰さんは女優さんの発声だからなんでしょうか?

 さて昭和24-25年頃を境にスイングジャズ系の歌謡曲は徐々に少なくなってきます。昭和27年にサンフランシスコ講和条約が発効し、進駐軍は「占領軍」から「駐留軍」にかわり規模が縮小します。当然進駐軍クラブのジャズ音楽需要も減るわけです。加えてすでに米国でのジャズの潮流がスイングからビバップそしてモダンジャズへと変わってきました。

 皆様、古い曲ですが服部スイングの名曲をぜひもう一度お聴きください。

2022/01/19(院長)

 

(1)菊池清麿「評伝 服部良一: 日本ジャズ&ポップス史」彩流社, 2013。服部良一を通じて日本の大衆音楽の通史。物語としても史料としても読み応えあり。著者の菊池氏は日本歌謡曲の研究家。

(2)笠置さんに力量がありすぎるために結構実験的楽曲を提供しているんじゃないかと想像します。

(3)ブルーノート:3度、5度、7度の音を半音低くする(♭フラット)とブルース的になる。3度はドから見てミの高さの音、5度はソ、7度はシ。

 銀座カンカン娘の歌詞で言うと「赤い(ブ)(ラ)ウス」「時計なが(め)て」「これがぎ(ん)ざの」=以上()内が5度♭、「カー〈ン〉カ〈ン〉娘」=〈〉内が3度♭でこれがブルージー=ジャズっぽい雰囲気を出すのに役立っている。

(4)灰田勝彦さんはこの曲コーラスにも参加されています。「鈴懸の径」も参照。

 

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2022年

1月

05日

宝塚月組「今夜ロマンス劇場で/FULL SWING !」

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

壁の飾りをかえました。宝塚月組「今夜ロマンス劇場で/FULL SWING !」

 新トップコンビ月城かなとさんと海乃美月さんの宝塚大劇場お披露目公演です。

「今夜ロマンス劇場で」は2018年の日本映画を舞台化したものです。とにかく心温まるいい話で、客席の方々からすすり泣きが聞こえました。そしてトップの2人が美しい!これを観るだけでも眼福というものです。白黒映画(1)と現実世界を行ったり来たりする場面構成が巧みで、プロローグの舞踏会場面から一気に劇の世界に引き込まれます。月城さんは映画の助監督牧野健司(2)を演じます、これが朴訥で実直な青年の役、優しくて味の深い演技をされます。そして海乃さんもいい芝居なんですよ。

 脇を固めるジェンヌさんも見ものです。鳳月杏さん円熟の演技です。大物映画スターでありながら大爆笑を取りつつ、他方で説得力あるイイ場面もこなす、長い手足のさばき、歌、目線、セリフどれをとってもこの方は本当に芸達者です。暁千星さんは映画版にない大蛇丸を演じてこれはハマリ役ですね。従者の狭霧(礼華はる)と雨霧(天紫)を連れてタンゴを歌う場面ではますます男役歌唱の腕前が上がっております。助監督役の風間柚乃さん、スター女優役の白雪さち花さんといい芝居も歌も上手な役者あり、本当に月組は層が厚いです。

 「FULL SWING」はジャズとラテンのアダルトなショー。月城さん海乃さんともに落ち着いた雰囲気の上に、鳳月さん、暁さん、風間さんといった熟達の月組スター達がいるので大人っぽい雰囲気のショーが合います。暁さんは得意の踊りで魅せてくれます、「さっきの踊りどうやったの?」というのが連発です。フィナーレではトップコンビ2人のデュエットダンスではなく、鳳月さんと彩みちるさん、暁さんと天紫珠李さんと3組の踊りで、彩みちるさんと海乃美月さんを暁さんがリフトする場面がありますよ。

 そして大階段エトワールには風間さん、きよら羽龍ちゃん・白河りりちゃん、これはいい歌です。風間さんの歌唱はもはやブルースマンの声です!

 色々目が足りないくらい見どころ多い素晴らしいショーです。

 皆様機会がありましたらぜひ月組のすばらしい舞台をご鑑賞ください。そして今年もお元気で過ごせますように。2022/01/05(院長)

 

(1)映画場面の海乃さんは「ローマの休日」を思わせる美しさです!

(2)役名「牧野健司」これは名映画監督マキノ省三、 マキノ雅弘といったマキノ一門をを連想します。映画を志す者なら憧れの苗字であります。なお院長も牧野姓ですが一族に映画関係者はおりません。

 

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