月組「グレートギャツビー」

壁の飾りをかえました

月組「グレートギャツビー」宝塚大劇場2022年7月22日~8月22日

 有名なスコット・フィッツジェラルド原作小説の舞台化です。

 トップ月城さんの説得力ある歌と芝居、何よりビジュアルが華麗です。ヒロインのデイジー海月さんが翻弄されていく姿も悲しく良い演技でした。そして今回私のいち推しはニック・キャラウェイ風間柚乃さんですね。優秀で実直で人のことを悪く思わず、友情に厚い、好青年を演じます、これが風間さんにピッタリなんですね。ストーリーを通してみれば陰の主人公であるように思います。専科、とは言っても元月組の輝月ゆうまさん演じる裏社会のボス、マイヤーが迫力満点です。闇酒場でギャツビー、ニックと話す場面、物凄い眼力なんです、ここはオペラグラスでしっかりご覧ください。踊りも切れがあります。

 さて宝塚は女性ファンが圧倒的に多いので、なかなか男役ファッションについて語られることは少ないと思います。今回は男性ファンの視点から男役の服装についてお話したいと思います。

 本作品はとにかく1920年代のアメリカン男性ファッションの展覧会で、かなり当時を再現していてお洒落だなあと感心します。そして人物の来歴や性格を反映するところもいいなあと思います。

 まずギャツビー(月城さん)、ポスターの白の三つ揃い、おそらくリゾート向け麻スーツでしょう、本当にカッコイイ。ベストはよりクラシックなウェストコート着用。とてもドレッシー!そしてシャツ襟に注目ください、ピンホールカラーといいます。ネクタイの裏側にピンを通して、ネクタイを前に起こし立体感を出すシャツで当時の流行です。ほかにもこれによく似たタブカラー(ネクタイの裏に左右の襟を繋ぐ紐がついている)を着用している登場人物が沢山います、注目してください。またコンビ(2色使い)の靴もお洒落です。なお本作品では男役はほとんど三つ揃いを着用していますが、現代のようにベストを着なくなったのは1940-50年代からです。それまではワイシャツの胸の部分を見せるのは下着が見えているくらいダラシナイと考えられていて、男はベストをつけるのがたしなみとされていました。

 ニック(風間さん)、カントリー調ジャケットに合わせるのは、ラウンドカラー(丸襟)のクレリックシャツ(襟と身が異なる色のシャツ、本作は襟が白、身がブルーの一シンプルなもの)これも1920-30年代の流行。別場面ではネイビーブレザー姿、これはアイビーリーグ名門Yale大学出身のニックらしい服装ですね。彼の真面目な性格を表しています。アイビーといえばブレザー!ニックのブレザーはダブルブレストに肩パッドの英国調(シングルでナチュラルショルダーが米国風)、胸に赤のエンブレム付、出身校の校章でしょうか(Yaleは青色だから違うのかな?)。そしてアイビーの定番ボタンダウンシャツ。パンツはグレンチェック柄、これは当時英国皇太子であったウィンザー公お好みの柄。1920年代に皇太子が訪米し流行しました。ということはニックは結構英国への憧れがあるのかなと思いました。ギャツビーがオックスフォード出身ときいたときも超尊敬の眼差しでしたからね。そうそう、左腕にトノー型(樽型)腕時計!これは最新ファッションアイテムだったのです。というのは当時は懐中時計がフォーマルであり腕時計はカジュアルな新型アクセサリーだったのです。特に四角や樽型が好まれました。ニックは生真面目ながらカジュアルでお洒落なものを取り入れる若い感性の持ち主なんでしょうね。

 トム(鳳月さん)は上流階級の金持ちファッションです、英国風スーツ、ポロ競技服といい、成金風ではなく上品です。アメリカには貴族制度はありませんが、貴族並みの名家ということがうかがえます。

 メイヤー(輝月さん)典型的ギャングファッションです、幅太のストライプスーツで大柄な輝月さんによく合いますね。

 ケンタッキー州ルイヴィルの場面、デイジーの父アンソニー(春海さん)ふくめこの町の男性の洋装はスーツが出現する前のフロックコートで古い様式です。女性陣の服もロングで旧式です。地方ではまだ旧式の服装が一般的であったことを物語っています。対してニューヨークは最先端ですね。

 ギャツビー家パーティーでの男性礼装もよくご覧ください、1回目のパーティーは黒燕尾でホワイトタイのクラシックな礼装、2回目のパーティー場面はタキシードつまり準礼装です、蝶タイはブラック、剣襟やショールカラーあり、シャツはイカ襟もひだ襟ありウェストコートとカマーバンドとバリエーション豊かなタキシード姿。元々タキシードは燕尾服のテールを切り取ったのが始まりで、1880年代に出現し米国で広まりました。タキシードはアメリカらしい新しい時代のパーティー衣装なのです。

 グレートギャツビー、芝居も歌も大変充実、機会ががありましたら是非ご覧ください。そして合間には古き良き時代の男性ファッションも楽しんでください。

(2022.8.3 院長)

 

 カテゴリ 宝塚歌劇

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