魅惑の三連符「津軽海峡・冬景色」

壁の飾りをかえました。

石川さゆり「津軽海峡・冬景色」昭和52年作詞:阿久悠、作曲:三木たかし

 まだまだ寒い日が続きますね。北国の歌を聴いています。石川さゆり19歳時の歌唱です、上手いですね~!若いのにこんなに力強い情感が出せたなんてスゴイです。

その情感は歌の力以外にも、曲にいろんな仕掛けがあるからなんですね。

 まずは特徴的な三連符リズムです。うえの/はつの/やこう/れえしゃ/おりた/ときか/らー、見事に3個ずつです。大アクセントを奇数節の1個目、中アクセントを偶数節につけます。三連符はアクセントがないとダラっとしてしまいます。これ洋楽でいうロッカバラードのリズムです、昔のリズム&ブルースやオールディーズによく使われました。三連符は強い情念を伝える力を持っています。

 メロディーですが、この曲は演歌ということにはなっていますがヨナ抜き(2)ではありません。Aマイナー(イ短調、主音ラ)です、白鍵盤をラから順番に弾くとこれになる。7番目の音ソは1回だけ出てきます、ただしソ#です(3)。ヨナ抜きほど日本風ではないメロディーでちょっとメランコリックな洋楽的な響きも残すのです。そしてコード進行が凝っていてツー・ファイブ・ワン(IIm7-V7-I)進行が使われています。ジャズでよく使われると言います。「青森駅は」の次「雪のなか」、最後の「津軽海峡冬景色」のところがBm7♭5→E7→Amです。定番のIV-V-I進行(4)の最初のIVを代理コードIIにしたヤツです。定番のIVよりもちょっと不安定さがあってカッコよくなり、さらにルート音がシ→ミ→ラと5度ずつ下がることによって、IV-V-Iより力強さがでるとされています。この進行で曲が伝えたい情念がさらに強く表現されるのです。

 作曲の三木たかし先生は、三連符、西洋音階の短調、ツーファイブ進行など様々な技巧を盛り込んでおられるんですね。そして阿久悠さんの作詞と石川さゆりさんの歌唱がみごとに溶け合った名曲です。

 今ではいわゆる「演歌の代表曲」的に思われていますが、こうやって聴くとなかなか洋楽のエッセンスも取り入れていてカッコイイなあと思います。そういえばこの時代の石川さゆりさんはドレスで歌っていました(5)。歌番組、レコード会社、芸能事務所も「石川さゆりは和服演歌とは一線を画しポップスで売り出す」という認識であったのだろうと推測されます。

 皆さま機会がありましたらこの三連符の名曲ぜひお聴きください。(2023.2.1院長)

 

(1)その昔ギターを練習したとき初心者向けのギター教本で、三連符のページで「津軽海峡冬景色のリズムです」と書いてありました。誰もが歌えるほど浸透していたのです。

(2)ヨナ抜き音階:前回ブログ「函館の女」を御参照ください

(3)ちなみに7番(ソ)を#半音上げた短調は和声的短音階と言って、主音(ラ)で終止させる力を強める働きがあります、だからフィナーレの「ふゆげーしき」が「し(ソ#)き(ラ終止)」となっているのです。

(4)カデンツ進行:安定して終止させる和音進行、数種類定番がある。Iは主音のドが根音ドミソ和音これが最も安定、IVは4番目のファが根音ファラド、Vは5番目ソが根音ソシレ。

(5)昭和52年2/28歌のベストテン、12/20FNS歌謡祭優秀歌唱賞、12/31日本レコード大賞・歌唱賞、12/31紅白歌合戦、この辺すべて洋装です。昭和63年頃までドレスで歌っている画像が残っています。

ブログカテゴリ 音楽 

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