9月も下旬というのに暑いですね。
一風堂「すみれ September Love」昭和57年(1982)作詞:竜真知子、作曲:土屋昌巳
前回のNENA(ネーナ)大ヒットは1984年の話でしたが、その少し前、日本ではこんなことが起こっていました。小林克也ベストヒットUSA(1981年10月~)やSony Music TV(1983年12月~)で洋楽が身近に広まり、邦楽においては1980年にニューミュージックが衰退傾向、アイドル全盛時代に入れ替わりました。他方1978年からのYMOをはじめとするテクノ・ミュージック、そしてその流れをくむニューウェイヴ(new wave)・サウンドが80年代初めから台頭しました。
一風堂はこのニュー・ウェイヴの嚆矢ともいえるロックグループです。まずビジュアルからして奇抜かつオシャレ。髪型、お化粧、衣装とも当時の最先端でした。近寄りがたいアーティスティックなオーラを感じました。もちろん音楽も、歌謡曲やアイドルはもとより商業系洋楽ロックとも違って芸術性高い感じでした。まあニューウェイヴというのはマイナーでちょっとわかりにくいって所に値打ちがあるというように認識されていた気がします。
この作品は企画段階からカネボウのCMタイアップ曲(2)と決まっていてレコード会社と事務所による全く商業主義だったわけです。CMの効果もあり大ヒットしました(オリコン最高2位、年間売上21位)。芸術家肌の土屋昌巳さんがよくOKしたなあと思います。楽曲はファンク・リズムに軽快なサウンド、メロディーがキャッチーですからそこが大ヒットにつながったのでしょう。ここに土屋さんギターの技巧が光ります。そして当時最新のデジタル・テクノロジーをふんだんに使い、最新鋭サウンドを作っていたわけです(3)。ちょうどこの82年頃から急速にデジタル化が進み、様々な実験的なサウンド作りが広がり、その後の80年代音楽シーン全盛へ向かったように思います。
ともあれ今2023年に改めて聴いても古さを感じさせない、不思議な魅力を持った曲です(4)。皆様、ぜひ一風堂(5)の「すみれ September Love」をお聴きください、そして80年代音楽シーンの熱気を感じてください。 (2023.9.20 院長)
(1)ニューウェイヴはメジャーレコード会社ではなくインディーズ(独立系小規模会社やレーベルのこと)での活動が多かったように思います。
(2)カネボウ化粧品「レディ80・パウダーアイシャドウ」のコマーシャル、ブルック・シールズが出演。この時代の日本は本当にお金があったのですね。
(3)ドラムパートは土屋さんがPCM音源を用いたサンプラーで打ち込んだとされています。
(4)土屋さんはこのあと商業的作品制作から離れ、自らのスタイルで創作活動を続けておられます。多方面にわたる才能を持った天才だなあと思います。
(5)なお余談ですが、ラーメンの「博多一風堂」は 当バンド名が店名の由来となっていることが本人たちの対談で明らかにされています。
関連年表
81年10月ベストヒットUSA放送開始
82年10月CD(コンパクト・ディスク)発売開始
82年10月 MIDI 1.0 規格(電子楽器の演奏データを機器間で転送・共有するための共通規格)
83年5月デジタルシンセサイザー ヤマハDX-7発売
83年7月任天堂ファミリーコンピューター発売