2023年

2023年

3月

15日

宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル」

宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル」

 宙組トップスター真風涼帆さん、潤花さんの退団公演です。

 007カジノ・ロワイヤルの宝塚版、原作や映画とは異なる話に作られているようです。歌で話を進めていく形式で楽曲が多いです。話はあまりシリアスでなく、戦闘やアクションも過激ではありません。コメディー要素が多く、過去作品のパロディがたくさん出てきますから、宙組を観てきたファンは感慨深いです。純粋にエンタテインメントとして楽しめる作品です。3時間があっという間ですよ。

 とにかく真風さんの男役を存分に楽しめる作品です。スーツ、タキシード、トレンチコート、革ジャケット・・・と真風さんのためにあるような衣装もカッコイイですし、シャンパーニュ、マティーニ、シガレットが似合う。台詞も歌唱も真風節が満載。そして銀橋にて斜め45度で眼をカッと見開き見栄を切る真風ポーズ。どれも円熟の男役芸集大成です。真風さんはよく「宝塚らしい男役」と評されます。これだけ重厚なトップさんはこれからしばらく出ないのでないかと思います。しっかり眼に焼き付けておきたいと思います。

 潤花ちゃん、雪組時代にはやや目立たなかったかもしれないが、宙組に組替えし真風さんの隣にきて輝きが増しました。魅力が開いた大輪の花です。潤花ちゃんの陽パワー本当に可愛かった!宙組に来て本当にいい役を務められました。

 二番手芹香さんは敵役ル・シッフル、いつもながらものすごい迫力の演技です。ラスボス感を演じておられます。懐かしのラスプーチンまであります!もちろんいつもの芹香さん熱唱も聴きどころです。

 寿つかさ組長(すっしーさん)が今回退団されます。宙組創設時から在籍され、そして長年組長を務められました。すっしーさんの見せ場が随所にあって大きな拍手が上がりました。

 紫藤りゅうさんも退団、今回はCIA諜報部員を演じます、これがノーブルな空気の紫藤さんにぴったり。真風さんをスマートに手助けする場面や、カジノの勝ち金でゴージャスに遊ぶなど紫藤さんのカッコよさが出ています。3国、英(真風)、米(紫藤)、仏(瑠風)の諜報部員の並びはスタイリッシュで高身長な宙組らしいシーンです。

 本作品、その他も見どころ沢山です。若翔りつさんのツヴァインシュタイン博士、マッドサイエンティストの役作りと歌が魅力。そして優希しおんさんキレキレな踊りは眼が離せません!ぜひ注目してください。

 皆様機会がありましたらぜひ宙組の舞台をご覧ください。(2023.3.15院長)

いつもは各組のポスターを飾っていますが、今回は院長が敬愛する真風さんの過去作品を並べております。

 

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2023年

3月

01日

三連符の魅力Only You, Great Pretender

壁の飾りをかえました

ザ・プラターズ”Only You”1955年作曲・作詞Buck Ram

 三連符ってどんなの?と聞かれたら、日本の曲だと津軽海峡冬景色、洋楽なら”Only You”でしょう。

 これこれ!このイントロですよ。この三連符から盛り上がりますね。リード歌手のトニー・ウィリアムズ、ファルセットが本当に気持ちよく抜けます!そしてきれいなドゥーワップコーラス。バックの演奏でずっと三連符が鳴っているんですね。ヴォーカルは4分の4で、バックが三連符。ハチロク(8分の6)とか8分の12と言われることもあります。三連符をベースにしたドゥーワップやロックやポップスのことを「ロッカ・バラード」と言ったりします。三連符って哀愁や情熱の感じがでますよね。

 "Only You"はビルボードR&Bチャートで7週連続1位、全米ポップチャート5位まで上昇し、大ヒットしたそうです。プラターズは続いて同じ年(55年11月)に「グレート・プリテンダー」"The Great Pretender"を発表し56年にR&Bと全米ポップチャート両方とも1位に輝きました。この曲も三連符のドゥーワップでいい曲なんですよ。(1)

 皆様、機会がありましたら三連符の名曲"Only You", "The Great Pretender"ぜひお聴きください。(2023.3.1 院長)

 

(1)2曲とも映画「アメリカングラフィティ」で印象的に使われていました。若いとき何十回いや百回以上観ましたからシーンを思い出します。次の曲へのつながりも、ウルフマンのDJも覚えました、懐かしいなあ。

 

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2023年

2月

01日

魅惑の三連符「津軽海峡・冬景色」

壁の飾りをかえました。

石川さゆり「津軽海峡・冬景色」昭和52年作詞:阿久悠、作曲:三木たかし

 まだまだ寒い日が続きますね。北国の歌を聴いています。石川さゆり19歳時の歌唱です、上手いですね~!若いのにこんなに力強い情感が出せたなんてスゴイです。

その情感は歌の力以外にも、曲にいろんな仕掛けがあるからなんですね。

 まずは特徴的な三連符リズムです。うえの/はつの/やこう/れえしゃ/おりた/ときか/らー、見事に3個ずつです。大アクセントを奇数節の1個目、中アクセントを偶数節につけます。三連符はアクセントがないとダラっとしてしまいます。これ洋楽でいうロッカバラードのリズムです、昔のリズム&ブルースやオールディーズによく使われました。三連符は強い情念を伝える力を持っています。

 メロディーですが、この曲は演歌ということにはなっていますがヨナ抜き(2)ではありません。Aマイナー(イ短調、主音ラ)です、白鍵盤をラから順番に弾くとこれになる。7番目の音ソは1回だけ出てきます、ただしソ#です(3)。ヨナ抜きほど日本風ではないメロディーでちょっとメランコリックな洋楽的な響きも残すのです。そしてコード進行が凝っていてツー・ファイブ・ワン(IIm7-V7-I)進行が使われています。ジャズでよく使われると言います。「青森駅は」の次「雪のなか」、最後の「津軽海峡冬景色」のところがBm7♭5→E7→Amです。定番のIV-V-I進行(4)の最初のIVを代理コードIIにしたヤツです。定番のIVよりもちょっと不安定さがあってカッコよくなり、さらにルート音がシ→ミ→ラと5度ずつ下がることによって、IV-V-Iより力強さがでるとされています。この進行で曲が伝えたい情念がさらに強く表現されるのです。

 作曲の三木たかし先生は、三連符、西洋音階の短調、ツーファイブ進行など様々な技巧を盛り込んでおられるんですね。そして阿久悠さんの作詞と石川さゆりさんの歌唱がみごとに溶け合った名曲です。

 今ではいわゆる「演歌の代表曲」的に思われていますが、こうやって聴くとなかなか洋楽のエッセンスも取り入れていてカッコイイなあと思います。そういえばこの時代の石川さゆりさんはドレスで歌っていました(5)。歌番組、レコード会社、芸能事務所も「石川さゆりは和服演歌とは一線を画しポップスで売り出す」という認識であったのだろうと推測されます。

 皆さま機会がありましたらこの三連符の名曲ぜひお聴きください。(2023.2.1院長)

 

(1)その昔ギターを練習したとき初心者向けのギター教本で、三連符のページで「津軽海峡冬景色のリズムです」と書いてありました。誰もが歌えるほど浸透していたのです。

(2)ヨナ抜き音階:前回ブログ「函館の女」を御参照ください

(3)ちなみに7番(ソ)を#半音上げた短調は和声的短音階と言って、主音(ラ)で終止させる力を強める働きがあります、だからフィナーレの「ふゆげーしき」が「し(ソ#)き(ラ終止)」となっているのです。

(4)カデンツ進行:安定して終止させる和音進行、数種類定番がある。Iは主音のドが根音ドミソ和音これが最も安定、IVは4番目のファが根音ファラド、Vは5番目ソが根音ソシレ。

(5)昭和52年2/28歌のベストテン、12/20FNS歌謡祭優秀歌唱賞、12/31日本レコード大賞・歌唱賞、12/31紅白歌合戦、この辺すべて洋装です。昭和63年頃までドレスで歌っている画像が残っています。

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2023年

1月

13日

ヨナ抜き音階「函館の女」

壁の飾りをかえました。

北島三郎「函館の女」昭和40年作詞:星野哲郎、作曲:島津伸男

 寒くなると北国を歌った曲を聴きたくなります、なぜでしょうか?。寒さを忘れるため夏の曲でもよさそうなのに。さて冬らしい曲のうちなぜサブちゃんなのかというと、前々回クリスマスソングの「ママがサンタにキッスした」を聴いているときからずっと「函館の女」が頭をぐるぐる回って耳から離れないからです。

 理由はわかっています、出だしが途中まで同じ音階だからです(1)。これがヨナ抜き音階とかペンタトニックと言われるアレです。ヨナ抜きとは、通常のドレミファソラシの7音から4番目ファと7番目のシを抜いた5音階です。日本で古くからある音階であり、日本的メロディーになると言われています。「ママがサンタに」はヨナ抜きで始まり途中からリズム&ブルースを交えた通常音階になりますが、「函館の女」は終わりまで完全にヨナ抜きです(2)。

 「函館の女」サブちゃんの歌唱は演歌の歌い方ですし、曲もヨナ抜き音階だし、確かに演歌に分類されます。しかし演奏をよく聴いてみると、いわゆる「演歌」でない部分があります。バックの演奏は明るいんですよ。管楽器はラテンの響きで、北国の暗さはありません。ギターなんかポールアンカ「ダイアナ」、ニールセダカ「オー、キャロル」のままですよ!

 これは昭和40年時点ではまだ「演歌」が確立されていなかったからと考えられます。以前の記事で書きましたが、「演歌」は昭和40年代に商業的に作られたもので、それまでは単に流行歌、歌謡曲でしたから大衆が好むものなら何でも様々なリズムやスタイルを取り入れた曲が多かったわけです。「函館の女」はそんな過渡期の曲と言えましょう。いずれにしてもサブちゃんの名歌唱とともにヨナ抜き音階と陽気なバックとのバランスが大きな魅力です。

 皆さま寒さ厳しい折です、北国に思いを馳せながらぜひこの名曲をもう一度お聴きください。(2023.1.18院長)

 

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(1)はーるばるきたぜはこだててへー(ドーレミソラドレミミミミミー)、I saw Mommy kissing Santa Claus (ドーレミソラド シソミ) ついでにテンプテーションズの「マイガール」まで脳内で同時に鳴ってきます。これもペンタトニックです。

(2)ピアノの黒鍵を順に弾くとヨナ抜き音階になっています。古畑任三郎が「函館の女」をピアノの黒鍵だけで弾くという有名な場面があります。試しにやってみてください。

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2023年

1月

04日

宝塚花組 うたかたの恋/ENCHANTEMENT

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

壁の飾りをかえました。宝塚花組「うたかたの恋/ENCHANTEMENT」

 うたかたの恋は初演から40年、大劇場の再演は30年ぶりに上演されました。話は「マイヤーリンク事件」という実際にあった謎の情死事件をもとにしているそうです。明るい物語ではありません。現代向けに潤色したといえどもさすがにスローに感じます。しかしとにかく美しい。主役ルドルフ柚香さんの軍服・礼装姿、立居振舞い、そして影ある芝居に耽美的な魅力が発揮されます。そしてマリー星風まどかさんの純真で儚い姿が寄り添うという、二人の組み合わせも美しい。舞台セット、花組たちの衣装ふくめ全体が本当に美しいです。

 今回で花組から専科に異動される水美舞斗さん、自由人であり友情を大切にするジャン・サルヴァドルの人情味あふれる芝居がいい!見どころは、舞踏会でルドルフの正妻ステファニー妃の意地悪からマリー(星風)をダンスで守る場面です、友情に厚い男気に感動いたします。

 この劇はともすれば少人数芝居になりそうですが、舞踏会や酒場シーンを取り上げ、多くの花組組子の登場機会があるのも嬉しい所です。舞踏会はドレスに黒燕尾、酒場では軍服と「観たい姿」の宝庫です。

 ラストシーン影ソロが、龍季澪さんと花海凛さん、すばらしい歌唱です。龍季さんは101期男役8年目で歌ウマとして着実に定評あります。花海さんはなんと108期1年目ですこれからが楽しみです。

 後半はENCHANTEMENT、香水をテーマにしたショーです。

演出の野口先生はブロードウェイ的な華やかなショーが特徴だと思います。今回もスター、衣装、舞台装置どれをとってもまさに今の花組の華やかさを活かしたショーです。

そして男役の女装も大変美しい!プロローグのエイト・シャルマント。そしてロケットダンスリーダーの希波らいと(103期)さん、超絶スタイルが良い、ファッションモデルかと思うほど。水美舞斗さん(95期)と女装の聖乃あすか(100期)さんの美しい取り合わせも見どころです。

 二番手の水美さんは本公演で花組から専科に異動されることもあり、いいシーンが沢山ありました。銀橋で同期の柚香さんと二人でカッコよく組む様は本当に男役の極みです。星風まどかちゃんを高速リフトするシーンでは長い拍手が湧きおこりました。

 デュエットダンスの影ソロは再び龍季さん、テキサス州出身で英語歌唱が抜群!いい歌聴かせていただきました。

 皆様機会がありましたら花組の舞台をぜひご観劇ください。(2023.1.4 院長)

 

(1)個人的には酒場シーン大好きで、登場するお酒を双眼鏡で観察しています。ロマネコンティやシャンボールニュジニーやラフィットが登場します(ラベルが1880年代のものと違うと思うけど)。そうそうマイヤーリンクの別荘で馭者のブラットフィッシュ(聖乃あすか)がトカイワインを勧める場面、トカイはハンガリーの名産ワインでオーストリア・ハンガリー帝国にちなんだものなんでしょうね。

 

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