壁の飾りをかえました。
五木ひろし「よこはま・たそがれ」昭和46年(1971)3月 作詞:山口洋子、作曲:平尾昌晃
前回までの話:演歌というジャンルは1969年藤圭子の頃は、アウトローなテーマを持った。その後大衆に消費されるなかで徐々に様式美となり、演歌という概念の固定化が進んだ。1972年「女のみち」や「涙の操」のようなパロディソングが流行したのは、演歌の概念が集約されてきたことの表れの一つである。
さて、1969年から72年に至るまでの間に発表されたのが、「よこはま・たそがれ」なのです。楽曲は、必ずしも演歌的とはいえなくて、ポップス路線に聞こえます。よく聴いてください、ベースなんかだいぶとビートが利いています。そして、音階がヨナ抜き五音階(参考:函館の女)ではなく、自然短音階なのです(参考:津軽海峡冬景色)、これがちょこっと洋楽ポップス的になる理由なのです。
五木ひろしさんの声質が演歌向きなので、(今でいう)演歌らしく聞こえてしまうのですが、本曲での歌唱では、こぶしや熱唱は導入せず、むしろ抑えめでドライな歌い方と言えます。そしてこのドライな印象になるのは、もうひとつ理由があって、歌詞に仕掛けがあるんですね。句の字数が、4-4-7なのです。典型的演歌は5-7調なのでちょっと違う印象を創ります。さらにフレーズ前半を名詞止め(または体言止め)にして、ぶっきらぼうな感じを出すのです。
この時代の演歌は、まだスタイルが凝り固まっておらず、実験的な要素があった、まだ演歌が自由であった頃、と言えます。五木ひろしとしての4枚目1972年5月「待っている女」や5枚目1972年9月「夜汽車の女」なんて演歌というよりポップスです。
皆様そのような耳でもってぜひこの五木さんの名作をぜひお聴きください。(2025.1.29 院長)
←前の記事「宙組 宝塚110年の恋のうた/Razzle Dazzle」|次の記事実験的演歌「わたしの城下町」→ |最新ブログ記事→