宇崎・阿木ロック歌謡「イミテイション・ゴールド」

壁の飾りをかえました。

山口百恵「イミテイション・ゴールド」昭和52(1977)年7月作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童。

 山口百恵は73年5月(14歳)でデビュー以来、千家和也・都倉俊一コンビを中心としたアイドル路線でしたが、76年6月(17歳)宇崎・阿木「横須賀ストーリー」くらいから大人のテーマを歌う歌手として変化してゆきました。「イミテイション」はそれから1年後の発表、宇崎・阿木の大人路線の曲です。この路線は78年5月「プレイバックPart2」78年8月「絶体絶命」79年3月「美・サイレント」79年9月「しなやかに歌って」に継承されます。

 とはいえ「イミテイション」発表時点で山口はまだ18歳。現代からするとこんな大人の歌詞を歌わせるなんて、昔の芸能界はなかなか無理をさせていたなあと思います。

 曲調はロック、出だしはまるっきりエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」、その後の進行はベンチャーズ「ウォークドントラン」または「木の葉の子守歌」を思わせます。のちの時代に宇崎さんが演奏するバージョンには「木の葉~」のコード進行がはっきり出ています。またサビ部分のスピード感なんか、さすが宇崎さんロックの人だなあ、と感心します。アイドルにロックらしいロックの曲を書かれたのです。

 70年代の歌謡曲は目まぐるしくて、ダウンタウンブギウギバンド、矢沢永吉、ツイスト、Char、桑名正博などロック・ミュージシャンが歌謡界に台頭したことは以前書いた通りです。一方で芸能界というのは売れるなら何でも呑み込んでしまう強かな側面があります。ロックが売れているのなら、アイドルに歌謡ロックを歌わせたら当たるでしょうということだったのでしょう。山口は73年5月デビューから本作77年7月まで18曲も出しています、80年10月の引退まで31曲。芸能界が1人のアイドルを消費し尽くした様子が窺い知れます。

 なお前回の記事DTBWB「サクセス」が77年3月ですから、発表時期が近いです、この時代宇崎さんの音楽性が大きく花開く様子が見て取れるように思います。

 なお、山口がTV出演するときにバックコーラス・ダンサーがつくのですが、このグループ名が「サクセス」でした。何かの偶然でしょうか。

 宇崎さんの多才な音楽性、山口百恵の転換点、芸能界がロックを呑み込み、アイドルを消費する現象、など様々な示唆のある本作、ぜひご鑑賞してみてください。(2025.9.3 院長)

 

カテゴリ 音楽

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