ネオGS ファントムギフト「魔法のタンバリン」

壁の飾りをかえました。一連のGSシリーズはこの回でいったん締めたいと思います。

ザ・ファントムギフト「魔法のタンバリン」昭和62年(1987)作詞:ピンキー青木、作曲:ナポレオン山岸&サリー久保田

発表年に注目ください1987年です。GSは70年頃に衰退したのですが、その後日本音楽シーンはいろいろ変遷を経て、83-85年頃からニューウェイブやバンドブームなど多様な音楽スタイルが発展しました。その一つの個性的ムーヴメントが「ネオGS」なのです。20年も経ってGSが再評価されたわけです。

 80年代の日本は、アイドル全盛の歌謡曲と並行し作編曲が凝った大人向けシティポップやハードロックがメジャーな流れで、最先端の音楽はテクノやニューウェイヴでした。85年頃からバンドブームがあり、そこではパンクやビート系がメインだったと思います。そんな中、60年代のシンプルなサウンドを顧みようという動きのひとつが「ネオGS」なのです(1)。実際はGSを再現するというより、1960年代のロック・サウンドを表現する洋楽寄りのグループが多かったように思います。

 ネオGSで本格的に日本のGSサウンドと60年代の雰囲気を盛り込んだのは彼ら「ファントムギフト」でした。メンバーは(敬称略)ピンキー青木(Vo)、サリー久保田(B)、ナポレオン山岸(G)、チャーリー森田(D)と名前も当時のGS風、シンプルな4ピースのロックコンボ構成です。

 本曲はインディーズのソリッドレコードからの3作目シングルです。もう歌詞がGSの世界なんですよ。ピンキー青木(1)の詞は神秘的な世界観、それがGSのロマンチシズムとちょうど符合したのです。ナポレオン山岸の超絶サイケギター、サリー久保田のリード・ベース(60-70年代の江藤勲寺川正興ルイズルイス加部ベース風)、チャーリー森田のタイトなドラムビート、どれもスゴくかっこいいんですよ。GSとして聴いて再現度が高いですし、ガレージロックとしても本当に名作だと思います。

 彼らは同年MIDIレコードから小西康陽プロデュースでLP「ファントムギフトの世界」を発表、これもかっこいい作品でした。その後メンバー間の音楽志向などの違いから89年に活動停止しました。

 ネオGSは他のグループの活動もふくめ盛り上がりました。この「60年代サウンドを見直そう」という考えは、その後の「渋谷系」に引き継がれて90年代音楽に足跡を発展したのです。

 皆様、機会がございましたら、ぜひとも「ファントムギフト」を探してお聴きください、そして80年代当時のネオGSの熱気を浴びてください。(2024.5.15 院長)

 

(1)ピンキー青木さん、2024年3月頃に亡くなっていたと発表されました。享年62歳。ご冥福をお祈り申し上げます。

(2)代表的グループ、コレクターズ、ストライクス、ワウワウヒッピーズ、デキシード・ザ・エモンズ、ヒッピー・ヒッピー・シェイクス、レッド・カーテン -(後のオリジナル・ラブ)など

 

カテゴリ 音楽

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