宝塚月組「桜嵐記/Dream Chaser」2021年5月15日~6月21日宝塚大劇場
トップコンビ珠城りょうさんさん、美園さくらさんの退団公演です。
「桜嵐記」は南北朝時代の話です。南北朝はヤヤコシイくて複雑な時代背景ですが、劇の初めに光月るう組長が語り部としてわかりやすく説明されるので一気にこの時代に入り込めてしまいます。この辺は作者の上田久美子先生の技ですね。
珠城さんの役は南朝の武将・楠木正行です。真直ぐ主君に忠義を尽くす武人、そして分け隔てなく他者に優しい人物、その生きざまがあまりも真面目すぎて不器用すぎて泣けてくるのです。そう、これまで珠城さんの役柄は真面目で不器用な人物ばかり。珠様キャラです。今回はまさにその集大成と言えそうです。劇中、武人として皆にお別れを告げるシーン、また戦で傷を負い弟の正儀(月城さん)に軍を撤退させ、楠の家を残して南北朝合一を成し遂げてほしい、と命ずるシーンは、退団するトップスターに重なり涙を誘います。
ヒロインは親兄弟を殺され一度は死を覚悟した姫、弁内侍です。美園さくらさんが演じます。健気かつ芯の通った人物を描く芝居そして歌唱で泣かせるのです。
次期トップ月城かなとさんが楠正行の弟 正儀を演じます。横浜市出身ながら見事な河内弁セリフ、これが真に迫って観客の心をわしづかみにするんですね。シリアスもコミカルもできる月城さん本当に芸達者ですね。
今回、実力派男役の皆さんも見所です。専科に異動される輝月ゆうまさん(楠木正成役、楠木3兄弟の父)が貫禄の演技、ソロ歌唱で客席を泣かせていました。千海華蘭さん演じる人足のジンベエの役もすごい迫力でした。
とにかく泣ける芝居で、劇が進むにつれて客席中からすすり泣きが聞こえてくるのがこの芝居です。
「Dream Chaser」楽曲もダンスも本当にいいのですよ、退団にふさわしいショーです。踊りは珠城さんの長身が映えています。美園さくらさんの歌ものびやかでいいです。今回で退団なのはもったいないですね。
鳳月杏さんスペインの踊り、ぴったりです。また、黒燕尾のそれもバイオリンとタンゴの場面がカッコイイですね。
皆様機会がありましたらぜひ月組の舞台をご覧ください。 (2021.6.2院長)