80年代のクリスマス・イブ

 壁の飾りをかえました。山下達郎「クリスマス・イブ」昭和58年(1983)

 早いもので今年もあとわずかになりました。ふり返りますと今年は7月からずっと80年代音楽の話を続けておりましたので、80年代を代表するクリスマス・ソングで本年のブログをしめたいと思います。

 もう誰もが知る名曲です。初めてリリースされたのは1983年9月アルバムの1曲でした、83年12月にシングルカット、86年に再度シングルカット(この写真の盤です)。88年にJR東海のCM「クリスマス・エキスプレス」(1)に採用され爆発的に有名になりました。80年代後半の空気がよく伝わってくるCMでした。

 さてこの名曲には「カノン進行」というコード進行が使われていて、ベース音が順番にドシラソファミレと下がっていくのです。これが、スムーズな流れと優雅な響きををもたらすのです(2)。間奏にはパッフェルベルの「カノン」そのものが使われていて、山下さんによる多重録音アカペラつきです。曲全体が荘厳な雰囲気で本当にクリスマスにピッタリですね。

 そして歌詞世界も文学的です。「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」なんて奥行きのある世界。さらにすごいなあと思うのが韻を踏まえた言葉選び、「きっと君は来ないひとりきりのクリスマス」→キ→キ→コ→キ→ク、「叶えられそうもない/必ず今夜なら」カナ→カナ、リズムとつながりを感じます。

 曲も詞も山下達郎さんの才気が隅々まで詰め込まれた作品です。

 2023年もブログにおつきあいくださりありがとうございました。皆様よいクリスマスをお過ごしください、そして幸せな新年をお迎えください。2023/12/20(院長)

 

(1)88年  深津絵里(この年だけホームタウン・エクスプレスX'mas編という名称)、89年  牧瀬里穂、90年  高橋理奈、91年  溝渕美保、92年  吉本多香美

(2)この曲はキーAで、A →E/G#→F#m7→E6→DM7→C#m7→Bm7→E 、度数で言うとI→V/VII→VIm7→V6→IVM7→IIIm7→IIm7 →Vで、このI(ド)→VII(シ)→VI(ラ)→V(ソ)→IV(ファ)→III(ミ)→II(レ)という風に順番に下がるので順次進行とも言います。2番目のV/VIIって何?と思うかもしれません、Iの次にVを置くのはトニック→ドミナントの定番進行なのですが、これだとベース音が「ソ」になります、ここでVの転回和音を持ってくる工夫をするとベース音が「ド」から1個下の「シ」VIIにできるのです。

転回和音とは、例えばIをドミソとするとVはソシレですが→下のソを1オクターブ上げてシレソにして鳴らすのが第1転回形と言います。そしてこの和音の最も低音が「シ」つまりVIIになるのです。

同様にして他の和音も転回形を利用してベース音が1個ずつ下がるように作られた進行なのです。

 カノン進行はアレンジを加えながら多くの曲に使われています。

 

カテゴリ 音楽

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