花組「鴛鴦歌合戦/Grand Mirage!」

壁の飾りをかえました。

花組「鴛鴦歌合戦/Grand Mirage!」 2023/7/7~8/13 宝塚大劇場

 原作は昭和14年(1939)マキノ正博監督の日活映画です。映画は69分と短いので、宝塚向けに少し話をかえ、さらに総踊りもあってにぎやかです。

 オペレッタと言うだけあって歌で話を進めてゆきます。とりとめのない喜劇なのですが底抜けに明るい幸せな話で、難しいことを考えずに楽しめます。芝居中あちこちで笑いが起こりました。

 トップ柚香光さんは主役浅井礼三郎をが演じます、浪人、着流し、下駄でカッコイイ、原作の片岡千恵蔵さんばりに落ち着いた芝居です。娘主役の星風まどかさん、ヒロインお春を演じます、これが本当にかわいい。礼三郎のことが好きなのになかなか言い出せない。何かというとライバルの娘たちの邪魔が入ってはスネてしまう。「ちぇっ」のセリフが可愛いです。

 この芝居、面白いキャラがたくさん。骨董好きの峰沢丹波守を永久輝せあさんが快演します。バカ殿ぶりの芝居が楽しいです(1)。ヒロインのお父さん志村狂斎をベテラン和海しょうさんが演じます。この役は実質的に副主役と言ってもいいでしょう。骨董狂いのダメ父親なのですが娘のお春を愛しています(2)。和海さんは本当に歌が上手で、芝居では重厚な演技、色気があって、何でもできる花男(花組らしい男役さんのこと)です。今回公演で退団されるのが大変惜しいです。原作になかった殿様の弟、秀千代(聖乃あすか)のヘナチョコ若様と小姓の空丸(美空真瑠)のかわいい演技、このコンビも見どころです。特に銀橋の下から出てくる所は一瞬なのでお見逃しなく。

 楽曲は意図的に原作の曲をそのまま使っているようです。さすがに現代のファンが受け入れにくいのではないかと心配するものもあります。原作のスイングジャズ感を強調する編曲と楽器構成にすればもっとよかったなと思います。昭和歌謡を研究する身としては「僕は若い殿様」(=青い空僕の空)、「青葉の笛を知るや君」(=或る雨の午后)、「偉いぞ偉いぞ」(=東京スウィング)いずれも戦前ジャズの帝王ディックミネさん歌唱の名曲で胸熱ですわ。

 ショー「グランミラージュ」はこれこそロマンチックレビューの本質。パステルカラー、広つば帽子、総踊り、そして優雅な時間が流れます。中詰め「シボネー」は8分間の長丁場、高揚感のある舞台。名歌手、和海しょうさんが歌いあげるところはテンション上がります。星風まどかちゃんを一之瀬航季さんが一人で肩に担いで登場する場面、これは驚きです。そして総員踊りまくりの豪華な見所です!とくにシボネー後半で上手側、侑輝大弥さんが汗だくになって暑苦しい顔でダンスを繰り広げるのは男役的色気が圧巻!ぜひ注目ください。夜の街の場面(黄色の衣装)愛乃一真さん(まのかずま)のキレキレ・ダンスにオペラグラスが釘づけになりました!ロケットダンスは黒を基調とした衣装で腰羽根なしシックで大人っぽい。後半のボレロ・ルージュも情熱的でよかったな。そして永久輝さんの歌をバックにトップコンビがデュエットダンス、本当に優雅です。

 魅力たくさんの花組公演、機会がございましたらぜひご覧ください。(2023.7.19 院長)

 

(1)原作では大歌手ディック・ミネさん(だから殿の名も峰沢です)が演じ、楽曲「青い空僕の空」「或る雨の午后」「東京スウィング」をジャジーに歌うんですよ。

(2)原作では名優 志村喬さんが演じます。役名もそのまま志村さん。

 

カテゴリ 宝塚歌劇

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